「相談されるマネージャー」に聞く、仕事の相談におけるコミュニケーション技術———BASE柳川慶太さんインタビュー
上司やマネージャーに「相談」をしてみたが、よりモヤモヤが増してしまった。
同僚や部下の「相談」にのったけれど、相手に伝えた解決策を実行してくれない。
そんな経験はないでしょうか?
今回のAgendは、「仕事の相談」をどうすればいいのか、BASE株式会社の執行役員、柳川慶太さんにお話をお聞きしました。マネージャーだけではなく、同僚や上司に相談する人たちにとっても役に立つ内容になっていると思います。どうぞ、最後の「まとめ」までお読みください。
柳川慶太(BASE株式会社)
大学卒業後、TIS株式会社にエンジニアとして入社。その後、株式会社マイクロアドでのDSPシステム開発を経て、2017年7月にBASE株式会社に入社。2019年にプロダクトマネージャーへキャリアチェンジし、2025年よりBASE BANK Department Managerとして同事業を統括。2025年3月27日付で執行役員に就任。
【Agendインタビュアー】 フジイユウジ
Agend編集長。
スタートアップや様々な事業の経営やグロースに携わる中で、事業を成長させるためのチームコミュニケーションに興味を持つようになり、仕事のコミュニケーションメディア「Agend」を立ち上げた。
「この人に話しても無駄だな。本心を言うことは損なんだな」って思われちゃうだけだよ。
BASEで金融事業の責任者をやっている柳川です。
これを自分で言うのは恥ずかしいんですけど、1対1のコミュニケーションなら相手の欲しい言葉が分かるタイプなんです。
その1対1での対話の積み重ねでマネージャーをやってきてます。
今日は、そんな1対1最強の柳川さんから「1対1のコミュニケーション術」を教えてもらいたいんですよね。
どうしたら、柳川さんみたいに相手の欲しい言葉が分かるようになれるんですかね。
うーん、気をつけてるのは……
「1対1の相談」とか「対話をする」ってのは、相手の納得を目指すってことですね。
おー、「解決よりも共感」とはよく言いますけど、恋愛相談とかじゃなくて、仕事の対話でこれを言う人は珍しいかも。
「解決より納得を目指すなんて、仕事にならないじゃん」って思う人の方が多いんじゃないかな……?
対話っていうのは、相手が納得するかどうかでしかないというのは変わらなくて。
自分が考えた「こうすべき」みたいな結論に導いてやろうっていう、相手を操作してやろうという意図って伝わってバレちゃうんですよ。
その結果、「この人に相談するのはイヤだな。本心を言うことは損なんだな」って思われちゃう。
「相手を正しい答えに導いてやろう」を目指して話してると、その解決策を受け入れてもらえないし、相手は心を閉ざすって言われるとグサグサ来るなあ(苦笑)
まずは、相談してもらえる人、頼られる人になろうってことですかね?
頼られる人になりたいってのはあるけど、それだけじゃなくて(笑)
やっぱり話して良かったと思われてないと、相手との心の距離ができてしまう。
そうなると、相談者自身が解決することよりも自分の中に閉じこもって考えてしまうようになりがち。
自分で答えを出せないし、言われたアドバイスも受け入れられない状態になる。
あーーー めっちゃわかる。
自己解決できないし、アドバイス通りにも動けなくなって袋小路に迷い込んでしまう人、めちゃくちゃいるもんなあ……。
そういう、本人にすら噛み砕けていないモヤモヤで悩んでるときに「こうすると上手くいく」なんて正解を伝えても飲み込めないから、いきなりそこにいかない方がいい。
マネージャーとか上司的な人が「こうすれば」って話しても、相手は「つまり『やれ』って言いたいんだな」としか感じないし、噛み砕けない。
話に乗ってない相手に「こちらの言いたいこと」を伝えても無意味。
とはいえ、納得を優先するのってムズくないですか?
たとえば、「指示に納得していない」みたいな相談があったとします。
相談してきた相手が納得するからと言って、「そうだね!会社の指示はクソだね!君が正しい!!」って賛同するわけにはいかないですよね?
「どうして、それを気に食わないと思ってしまうんだろうね?」って聞くところからじゃないですかね。
「経営陣は、なんでこの意思決定をしたんだろう」っていう背景を一緒に紐解くっていうのを、まずはやってますね。
あー、なるほど。
「納得を目指す」というのは、相手の言っていることを肯定したり、賛同してあげるってわけじゃないんですね。
そうです。
相手が嫌がらないように「何が問題なんだろう」って話をしてるなかで、考え方を再構築できるように問い直したりするっていうのが、基本的なコミュニケーション。
たとえば、会社のダメなところに気づいてるけど、文句を言うだけで周囲の士気を下げている人に対してなら、「これに気づけるのは凄いことだね」と伝えることから。
話が盛り上がってから「その気づいてることで成果を出したいなら、サポートできるよ」と伝えるし、「文句を言うだけなら損してるよ」という事実は率直に言いますね。
あー、ここ面白いすね。
柳川さん的には「導いてる」とか「行動を変えてやろう」という意図でそれを話してるんじゃなくて、押し付けの意見を言わずに、どんな選択肢があるか考えてもらうってことですよね、これ。
相談してきた部下を「この答えに導いてやろうという意図ではない」の、読者に伝わるかな……
相手が嫌がらないように、というのが大事で。
相手が興味のない問いかけをしたり、話に乗ってきてないのに答えを聞かせるようなことは意味がない。
問いかけても意味がない(笑)
自分が話したい問いや答えをするんじゃなくて、相手が乗っかれる、盛り上がる話をするのが大事なんすねえ。耳が痛い……
相手が、「この話するの面白いな」って感じてなければ、どんなに正しいことを言っていても相手の納得には近づかない。
さっきの例で言えば、「文句を言っても、仲間の士気を下げる人だと思われちゃう。でも、ダメなところを変えようとする人なら評価されるよ。」という選択肢を伝える。
「その不満があるなら、この話に興味あるんじゃない?」って、本人が面白がれるように伝えればいいと思う。
その選択肢を出すのって、「こっちに行け」とか「こうすべきだよ」って伝えているのではなく、事実としてこんな選択肢があるということを伝えているんですよね。
そう。誘導しないことと同じくらい、キレイに整えた「いいこと」を言わないようにするのも大事。
解決策を提示するよりも、「面白がってない人をどうしたら面白がらせられるんだろう」とか「この人の本当の悩みはなんだろう」っていうところから話を広げていく。
傾聴するだけではなく、問いを自分で立てられるように。
「正しい答えを教える」じゃなくて、一緒に話して盛り上がることで再構築されていくように話す。
わかるんだけど、これ実践するの難しくないですか?
「相談されたら、答えを返すのが仕事」って思ってる人も多いし。
うーん、難しいかな?
まあ、たしかに難しいかもしれないけど、ここを頑張らないと「こうしろと言う」か「ただ話を聞く」になっちゃうから。
「相手にこうすると良いよ」と伝えることしかできないマネージャーも多いし、「ただ傾聴する」のが上手いだけの人もいる。
それよりも『相手の納得』を目指した方が、良い結果につながりやすいってことですねえ。
さっき「ただ話を聞くだけ」はダメだとは言ったけど、「まずは聞く」ことが大事で。
相手が乗っかれる話をするには「どうすればいいか」を話すのではなく、「どう感じているか」を知ることからってことですよね。
そうなんだよね。
よく話を聞かないと、何に不安・不満を感じているのか分からない。
それから、「僕はこう思っている」という自分の考えを伝えることはしますね。
誘導や命令にはならないように自分の考えを伝えるのって、めっっちゃムズくないですか?
どしたらいいんですかね。
さっきも話したけど、自分をキレイに見せようとするのを止めたら良い。
「難しいよね」とか「それは普通に誰しもが迷うことだし、僕も難しいことだと感じる」と伝える。
相談をされている側は「わからない」と言わずに、わかったような答えを言ってしまいがちだから、それを意識して避けた方が良い。
あー、相談されたり、相手の悩みを聞いたりすると、なにか反射的に「いいこと」を言おうとしちゃう人は多いかも。
それもやっぱり、自分の持っている答えに誘導しようとしてるから、キレイな言葉にして出しちゃうんだと思うんですよね。
リフレクションに至るには誰かの共感があると助けになるから、「こう行動すると良い」みたいな答えを伝えるんじゃなくて、「迷ったり、モヤモヤしてるのは別におかしいことじゃなくて、普通だよね」って共感を中心に話していますね。
リフレクションとは
日本語では「振り返り」「省察」「内省」。
失敗の原因や対策を考える「反省」とは違い、「なぜそう感じたのか」「自分は何を大事にしているのか」といった、自分の内面や感情にも目を向け、経験の意味を捉え直した変化につながるとされています。
相談してる本人が「このモヤモヤって何なんだろう」ってことを説明できるほど分かっていないから、論理的な「答え」を話してもモヤモヤが増すだけなんでしょうね。
そう、自分の思ってることを相手に説明できる人なんて、ほぼいない。
説明できないモヤモヤがあって、それを不正確な言葉にして相談してる。
そのモヤモヤしてることを少し説明できるようになると、相談してる人の中で気づきが生まれたり、不安が減ったりする。
あー、そうですよね。
だから先回りして「あなたの不安は〇〇から来ています」なんて分析してあげても意味はなくって、「なんでだろうね」って話す方が良いんだ。
傾聴するだけではなく、リフレクションが起きる問いを自分で立てられるようになってもらうって感じか。
リフレクションを起こす気の利いたテクニックがあるとかじゃなくて、「この人の本心って何なんだろう」っていうのに関心を持って聞いて、一緒にそれを掘り下げていくってのをやってますね。
「それじゃダメだよ」って誘導・命令しない胆力。
ついつい、相談されると「課題を解決すること」を目指して話してしまうけど、それは結果的に課題解決しないことが多いってことですよねえ。
相手に共感して、「なんでそう感じたのか」を紐解いていくことが1対1のコミュニケーションで最も大事って、かなり意識してないとできない。
相手が出す答えは、相談を受けてる側が望むものじゃないかもしれないけどね (笑)
「チームを変えるためにキツい思いはしたくありません」って答えに行き着く人もいるんだけど、それはその人の出した答えだから、無理に矯正させることはなくて。
そこで「それじゃダメだよ」って誘導・命令しちゃうなら、相手と対話できなくなって悪化するだけだよってことですよねえええ。
これ、胆力がいりますね。柳川さんスゲェな(笑)
「それじゃダメ」とは言わないけど、「周りや上司からこう思われるけど、それは自分がした選択の結果だよね」って事実は伝えるから。
そういうことを率直に伝えないと、変な関係になるし、そこからさらに話すこともできなくなる。
相手を答えに誘導しようとか、なんか「いいこと」を言ってやろうって邪念を捨てないといけないんだな(笑)
コミュニケーションの失敗って、だいたいが「相手のことを自分と同じ考えにさせよう」とか「自分の思ってる通りに行動させよう」って考えによるものだと思っていて。
相手が「俺はやりたくない」って言ったとしても、「なんで、そう思うんだろうね」に戻って、相手の興味のある話をすればいいんだと思いますよ。
まとめ:誘導しないのは、結局それが最善手だから。
「相手を解決に向かわせようと誘導するのは、上手くいかないだけ」という柳川さんと同じ前提に立つと見えてくるものがあります。
自分にできるのは、相手が選択肢をフラットに判断できるよう、興味を持てるような対話をすること。
そのうえで、相手が最終的にどこへ向かってもいいという姿勢で向き合うしかない。こちらの考えている「こうしたらいい」に相手は向かわないかもしれない。
それでも、無理に誘導しようとするよりは良い。
相手の行動が変わらないといけない、相手の仕事が成功しなくてはいけいけない、そう考えて誘導しようとすればするほど上手くいかなくなる。
仕事の目的・目標という「コト」に向かう前に、まず「ヒト」に向き合うことが最善手になる。
柳川さんの言う「相手の納得を目指す」は、そういう話でした。
複眼道場 (柳川さんが主宰する、多角的に見る力を鍛える学び場)
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(企画・編集:フジイユウジ / 取材・文・撮影:奥川 隼彦)取材:2026年7月