「あの人が変わってくれない」———人が動かないとき、どうしたらいいのか。カケハシ渡邉暁雄さんインタビュー

渡邉暁雄さんとカケハシのロゴ

会社組織で働いていると誰しもが感じる「あの人はどうしたら変わってくれるのか」や「どうしたら会社は動くのか」。

そんな悩みに、株式会社カケハシで組織開発をしている渡邉暁雄さんにお答えいただきました。ぜひ最後のまとめまでお読みいただければと思います。

渡邉暁雄さん


渡邉暁雄

株式会社カケハシ エンジニアリングマネージャー。大学卒業後、新卒でマクドナルドに入社。SIerへの転職をきっかけにエンジニアのキャリアを積む。その後、さまざまな組織でマネジメントとチームづくりに携わり続けている。現在はカケハシにてエンジニアリングマネージャーをしつつ、コーポレートITのグループも管掌。

フジイユウジ


【Agendインタビュアー】 フジイユウジ

Agend編集長。
スタートアップや様々な事業の経営やグロースに携わる中で、事業を成長させるためのチームコミュニケーションに興味を持つようになり、仕事のコミュニケーションメディア「Agend」を立ち上げた。

会社の文句を言えるってことは、問題に気づけているってこと。

フジイユウジ

Agendは「良いマネージャー」と評判のみなさんの考え方やコミュニケーションを紹介しています。
相手が上司であれ、部下であれ、「あの人はどうしたら変わって(動いて)くれるんだ」という悩みを抱えている人って沢山いると思うんですよね。今回は、そんな話を渡邉さんとしたいと思ってます。

株式会社カケハシでエンジニアリング組織のマネージャーや組織開発をしています、渡邉です。
「変わってくれない」とか「動いてくれない」って思いますよね。
若いころは、僕もめちゃくちゃ文句言ってました (笑)

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

むちゃくちゃ文句言ってた (笑)

上司に「あそこがおかしい、ここがおかしい」って、昼飯のたびに言っていたら「お前がやってみればいい」って言われて。

渡邉暁雄さん

手を重ねて話す渡邉暁雄さん

実は、文句を言っている人って、他の人がまだ気づいていない問題の重大性に気づいている人なんですよね。
だから、「偉い人が変えるべき」だとか「これがおかしい」って言ってる人は、問題を解決する『最初のひとり』になって動いた方がいいと思っていて。

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

おおー、面白い。
文句を言えるってことは、問題に気づけているってこと。

世の中にある組織や事業が改善されていった話には、変えるために動いた『最初のひとり』がいるじゃないですか。
その『最初のひとり』として動く人は誰かと言うと、そこに課題意識を持っている「あなた」なんじゃないですかという話になる。

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

「課題意識を持っているあなた」って言葉、いいなあ。
その上司のひとことで、文句を言う側から、問題を解決する『最初のひとり』になれたんですねえ。

いや、すぐに文句を言う側じゃなくなるなんてことはなかったんですよね(苦笑)

渡邉暁雄さん

「あの人は、なんでこのレベルのことすら分からないんだろう」と思ったら……

私自身がマネージャーになって、最初の2年くらいのことなんですけど。
それなりに成果が出て、自分は仕事ができていると思い込んでしまっていた時期があって。
そのころの自分はまさに「僕がいなかったら、この仕事どうなっていたか」という気持ちが、いろいろなところに出てしまっていたと思います。

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

仕事ができるようになってきた中堅あるあるですよね。
「これは私だからできたんだ」とか、ちょっと傲慢さが出てしまう時期というか。

冷静に自分の普段の言動を振り返ってみると、
「みんな、これをやれないから上手くいかないんだ」
「あの人は、なんでこのレベルのことすら分からないんだろう」
……とか、そんなふうにメンバーや上司の問題ばかり見て、文句を言っていた自分がいたんですよ。

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

まだ会社やまわりの人の文句を言っていた(笑)
自分も昔はやってたなあと……思い当たる節がありすぎて耳が痛い話だけど、仕事ができるようになる過程あるあるなんでしょうかね……

ある人の問題ばかり見てしまうと、その人に対しての評価は下がっていく。
その気持ちは隠しても伝わってしまうから、相手からも、それを見ているまわりの人からも、信頼されにくくなっていく。
それは全て、「アイツのここが問題だ」という目線が作っているんだと思います。

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

いまの穏やかに相談にのってくれそうな渡邉さんからは、ちょっと想像もつかない尖った時期があったんですね〜
そこから変わる転機があったんですか?

あるとき、部下に「最近、生意気だな」って言われたんです。

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

部下に言われたんすか (笑)

いやー、仲の良い部下だったから言ってくれたんですよね。
面と向かって言ってくれて。それでハッとなった。

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

成果が出ていて、自分がイケてると思ってるときに部下から「生意気だ」って言われたら、「何言ってるんだ、俺のおかげで上手くいってるだろ」ってなってもおかしくないですけど、それは素直に受け止められたんですね〜

あんまり関係性がない人に言われても「わかってないな」って感じたでしょうけど、「こいつに言われるってことは、本当に俺ってダメなんだろうな」と思わせてくれる相手だったんですよ。

渡邉暁雄さん

「言っても上司は動いてくれない」は、勝手な期待かもしれない。

「最近、生意気だな」って言われて、それまでの自分がやっていたことを振り返ってみると、「自分が他人を変えようなんて、とんでもなくおこがましいことなんだな」と思うようになって。
おこがましいどころか、自分が相手の動きを悪くする側だったんだ、と考えるようになりました。

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

他人を変えるんじゃなくて、自分を変えた方がまわりの動きを良くできると気づいたってことですね。
とはいえ、相手は何も変わらなくていいんですかね。
仕事の成果を出さなくて良いわけじゃないですし。

成果を出すために他人に変わってもらう、誰かに動いてもらうんじゃなくて、そこに課題意識を持っている自分が動く。
『最初のひとり』になることで、チームで成果を出せるように動く。
そこで動けないまま諦めてる人って、勝手な期待があると思うんですよね。

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

期待?

「言っても上司は動いてくれない」だとか、「会社は解決しようとしていない」っていうのは、「問題に気づいて動いてほしい」という相手への『期待』があるわけですよね。

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

あああああああああ!!!
「経営陣だとか上司がやるべき」って思ってしまうのも、「この問題に取り組んでほしい」と相手に勝手な期待を持っているから、イラついてしまう……って……こと…

そうだと思います。
「上司なんだから、これくらい理解して動くべき」という期待があるからですよね。
まず、その期待をヒトにかけるのを止めて『この問題を解決したら、こんな形になる』という結果に向かっていくコトに変えるのが大事で。

渡邉暁雄さん

談笑する渡邉暁雄さんとフジイユウジ

この観点を持たずに他人に期待してしまうと、勝手に期待して、勝手に裏切られた感じになる。
それって、勝手に片思いして、勝手にキレてる人みたいじゃないですか。
「私こんなに好きだったのに裏切られた!」みたいになっちゃってますよね (笑)

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

あー、部下に勝手に期待する人もいるし、上司や会社に勝手に裏切られた気持ちになってる人も、めちゃくちゃ沢山いるなあ……

だからといって、「もう期待しないで、自分が好きなことしかしません」っていう拗ねた子どもみたいな態度をとっても苦しいままなんで。
『最初のひとり』として動いた方がストレスも少ないはずなんですよね。

渡邉暁雄さん

正論で人を動かすのではなく、相手の「してほしい」を優先する。

フジイユウジ

ここまでの話を読んで、「理想論でしかない」とか「そんなことしても、まわりは変わらない」って感じる読者も多いんじゃないですかね。

そうですね。
まわりは変わらないし、そう簡単には動かない。
僕もよくつまづきますし、文句を言うときは今でもあります(笑)
逆説的かもしれないんですけど、そういうときは、まず自分から相手を助けに行くと上手くいきやすいんです。

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

おー、面白い!!
「助けに行く」って聞くと、「自分が推進したい方向に誘導する」とか「成果を出すために自分が作業する」って意味に捉える人がいるんでしょうけれど、渡邉さんの言ってる「助けに行く」は、そういうことじゃないんですよね?

正面を向いて微笑む渡邉暁雄さん

ここでいう「助ける」というのは、相手の代わりに成果を出すだとか、こっちの考え通りに相手を動かすってことではないんです。
あくまでも、相手が困ってると感じているところに応えることで。

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

「助ける」というのは、誘導とか指示じゃない!
成果が出るように動かすみたいな、相手を操作しようとすることとは真逆なんですねえ。

そうです。
自分の思う「こうあるべき」という論理で動かすんじゃなくて、相手の「してほしい」が先。
つまり、やることはすごく地味です。
話を聞いて、相手の困りごとをしっかり解決して、動きやすくしてあげるだけなので。

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

でも、どうしてほしいか言ってくれないことの方が多くないですか?
メンバーに声をかけても「大変です」みたいなことしか言わなかったり。

言えないのは当たり前なんです。
「本当は助けてほしいけど、どんな助けが得られるのかも想像つかないし…」と思っている人は多いですからね。
部下は「職位が高い人の時間を使ったらいけない」って言うし、上司は「部下に難しいことをやらせてはいけない」と思っていることも多いし。

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

あー、それはマジでそうですね。
でも、どう動いてもらいたいかを具体的にして動いてもらうのって、勝手な期待をして待つのとは違うんだけどな。

上司側も部下側も、どちらも忙しくて、お互い相手を見る隙間がない。
みんなそういう状態だからこそ、誰かが余裕ある顔をして「何を手伝ったら助かる?」と言わないと始まらないんですよ。

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

「チームや事業を変えようとする人がいない」とか「みんな自分を助けてくれない」の答えが、「その前に他の人を助けに行く」なの、完全に筋が通ってるんだよなあ。

「この状況には何が足りてない?」って考えられるように

手を組みながら話す渡邉暁雄さん

そもそも、「この人に問題があるから成果が出ないんだ」というところに帰着してるのって、まわりにいる人のことを信用していないってことじゃないですか。
そういうときは、相手を変えようとするのでもなく、その人が助かると感じることをやってみるってのが良かったりするんですよね。

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

めちゃくちゃ良い話だなあ。
文句を言うだけの人になるか、問題を解決する人になるかの分岐がある。だけど、安全に会社や上司の文句を言ってられるコンフォートゾーンに留まる人っているじゃないですか。

文句言ってるのは安全だけど、苦しいし、悲しいはずなんです。
勝手な期待をするよりも、動いた方がいいんですよね。
それは相手を信用していないという意味ではなくて……

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

行動したら良くなることを信じてるってことですよね。

そうです。
勝手な期待はしないけれど、信じているんですよ。その違いがすごく大きくて。
結果が出ないときに「あいつはダメだ」とヒトを見るんじゃなくて、「このやり方は違ったな」とコトを見にいく。
その、行き先がヒトかコトかでまったく違う。

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

組織を変えるための『最初のひとり』として動いたとしても、すぐには上手くいかないことって多いと思うんです。
そんなときに「誰のせいで、上手くいかない?」じゃなくて、「この状況には何が足りてない?」って考えられるようにならないといけない。
「オレが動いてもまわりは変わらん」ってところに戻ってきてしまうと、『最初のひとり』になれないまま終わってしまう。

そうなんです。
僕自身は、『最初のひとり』になろうとしてる人を増やしたいと思っていて。
文句を言うだけから『最初のひとり』になれるように、橋をかけていくような。

渡邉暁雄さん

フジイユウジ

それってカケハシの社名にかけて言ってます? (笑)

カケハシに入る前からやってるから、社名にはかかってなくて(笑)
会社の文句を言ってる人に「お前の言ってること正しいよ、やれるように場を整えるから、やってみなよ」って言うような支援をしてきただけなんですよ。

渡邉暁雄さん

まとめ: 会社の文句を言うよりも、自分が動く方がラクになれる。

文句を言いながら誰かが動くのを待つより、問題に気づいたあなたが『最初のひとり』として助けに行く方が、きっと早いし、心も楽になるはずです。

  • 文句を言えるのは、問題に気づけている証拠。
    「偉い人が変えるべき」と言って待つのではなく、課題意識を持っている自分こそが、問題を解決する『最初のひとり』になれる。文句を言っている人は、他の人がまだ気づいていない問題の重大性に気づいている人です。
  • 期待はヒトにかけず、コトに変える。
    「言っても上司は動いてくれない」という諦めの裏には、「気づいて動いてほしい」という相手への勝手な期待があります。
    勝手な期待をするのではなく、まわりを巻き込んでいくために自分が動く方が健康的です。
  • 正論で動かすのではなく、先に助けに行く。
    動いても、すぐには人は動きません。
    相手の「してほしい」に応えて、動きやすくしてあげること。誰かが余裕ある顔をして「何を手伝ったら助かる?」と言ってみることから始まります。

(企画・編集:フジイユウジ / 取材・文・撮影:奥川 隼彦)取材:2026年7月

新着記事

次に読む 会議を減らしたい。組織内の適切なコミュニケーション量とは。