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「ありのままを話せるチームのつくり方」────LayerX鎌谷さんインタビュー

見出し画像。笑顔のLayerX鎌谷さんとタイトル

メンバーとマネージャーがどんな話でも気軽にできるというチーム。イメージはつくけれど、どうやったらそうなるのか「つくり方」はわからないという人も多いのでは。

今回は「要点をまとめられなくても、ありのまま話すことが大切」と語る LayerX の鎌谷さんが実践してきた”良いチームづくり”の秘訣をじっくり伺いました。
どうぞ、最後の「まとめ」までお付き合いください。

鎌谷さん


鎌谷 太士

株式会社LayerX バクラク事業部 インサイドセールス部 マネージャー。
大学卒業後、新卒でキーエンスグループ入社。3年目から営業所リーダーとして新商品販売責任者、組織マネジメントに従事。その後、3社のスタートアップでインサイドセールス部門立ち上げ、執行役員を経験。株式会社LayerXではインサイドセールス部のマネージャーを務める。

フジイユウジ


【Agendインタビュアー】 フジイユウジ

Agend編集長。
スタートアップや様々な事業の経営やグロースに携わる中で、事業を成長させるためのチームコミュニケーションに興味を持つようになり、仕事のコミュニケーションメディア「Agend」を立ち上げた。

言いたいことや要点はまとまってなくて良い。

株式会社LayerXの鎌谷です。よろしくお願いします。
現在はインサイドセールス部門のマネージャーをやっています。

鎌谷さん

フジイユウジ

「LayerXで良いマネージャーと言われてる人にインタビューさせて欲しい」と伺ったところ、真っ先に鎌谷さんのお名前が挙がりました。
鎌谷さんの書いたnoteでも、「報連相」や「カルチャー浸透」の重要性が説かれていて、メンバーの力を引き出すコミュニケーションにこだわりをお持ちなんだなーと感じてます。

インタビュー受けるとか、慣れていないから良い話ができるか不安ですけど……

鎌谷さん

フジイユウジ

気楽に話してください (笑)
マネージャーとしてメンバーとコミュニケーションするときに気をつけていることなんてあります?

まずは「キレイにまとめようとしなくていいから、現状をそのまま伝えてほしい」ということを常に伝えています。

鎌谷さん

フジイユウジ

そのまま。
要点を絞ってサマライズ(まとめること)できなかったり、そもそも何をどう伝えたら良いか分からないメンバーもいると思うんですけど……?

そうですね、そのまま伝えてくれていいんじゃないですかね。
新卒で入った会社はキーエンスのグループ会社なんですけど、その時に「ありのまま報告しろ」って自分自身がよく言われてたんですよね。
「上手くサマライズできなくていいし、何を言いたいのかキレイに整えなくていいんで、まずはありのまま伝えろ」って教えられてきたので、自分もそうメンバーに伝えていますね。

鎌谷さん

フジイユウジ

あああああ!!!
「要点をまとめて」とか「つまり、言いたいことは?」って態度でメンバーに問いかけるマネージャーがいるけど、それと逆だ。
メンバーに頑張ってキレイに整えてから伝えないといけないものだと思われたら、ちょっとした気づきとか言ってもらえなくなるじゃないですか。

スピードとありのままであることが大事で、キレイな報連相であることは私は求めていないんですよね。

鎌谷さん

フジイユウジ

気がついたことや軽く考えた生煮えのことも率直に言ってもらえるマネージャーって、メンバーの気づきをフル活用できますよね。
人数分のセンサーを使えるようになるというか。

LayerXの会議室。フジイと鎌谷さん座って会話している。

フジイユウジ

チームメンバーが拾ってくれた情報をたくさん得るためにも、余計なフィルターを通さずに思った通りを伝えてもらう。
マネージャーは得る情報を絞らず、情報を得たあとに咀嚼する方が良いって考え方ですね?

そうですね。
新卒で入った会社でちょっと天狗になってる時期があったんですけど、その時はちょっと自分を良く見せたいとか上手いこと言いたいみたいな心理が働いたんです。
そうなると、上手い言い方とかぼかした伝え方をしたくなっちゃうんですけど、そのときの上司からは「上手くまとめずにそのまま話せ」って叩き込まれて。

鎌谷さん

フジイユウジ

メンバーからすると、率直に話したら自分の評価が下がったり、仕事できないと思われたりしたら怖いって感じやすいじゃないですか。
だから、上手く伝えたいと思って情報を加工しちゃう。

誰しも、自分ひとりでは解決できない悪いことが起こる時って必ず来ると思うんですね。
これは自分の習慣も関係してるんですが、マズい状況で自分が素直に人に助けを求められるかを自分に問いかけてみると、普段から包み隠さずに話していないと難しいって気がついたんですよね。
上司から「そのまま話せ」って言ってくれてたのは、そういう時のためなんだなと。

鎌谷さん

フジイユウジ

めっっっちゃ良い話じゃない、これ!?!?
「悪いことがあるときだけ率直に伝えて、平時は大切なことだけ伝えてこい」ってマネージャーがいるけど、それじゃ上手くいかない。

マネジメントするようになってからも、メンバーにも同じように「そのまま話す」ということの意義とか大事さっていうのを伝えてます。
普段からそうしていれば、いざってときに助けてもらいやすいし、状況も伝えやすいですし、何より自分自身を助けることになるんですよね。

鎌谷さん

フジイユウジ

マネージャーが「メンバーが素直に話してくれない」って言ってるのはよく見る光景だけれども、それはどんな話もマネージャーがちゃんと聞いてくれるって状況を作れてないだけなんでしょうね。
鎌谷さんは、率直に話すってことを指示するだけじゃなく、それが自分のためになるってことをちゃんと伝えてるのが良い……

違和感を伝えてもらう技術。

鎌谷さんが笑顔で説明している。

あと、違和感を伝えることが大切って話をしてますね。

鎌谷さん

フジイユウジ

わかる~
マネージャーはメンバーのすべての仕事をずっと見ているわけじゃないからこそ、違和感っていうシグナルをキャッチしておきたい。

そうですね。
これなんかちょっと違うんじゃないのっていう違和感は、現場にいるその人たちしか得られない感覚だったりするので、それを知りたいんですよね。
これも、間違ってても良いし、ズレた感覚でも良い。ともかく「違和感があること自体が大事」なので伝えてほしいって言ってますね。めちゃくちゃ小さな違和感でもいいから。

鎌谷さん

フジイユウジ

鎌谷さんが良いマネージャーって言われてるの分かるわー
「このマネージャーなら良い情報として受け止めてくれる」って安心感や信頼があるからこそ伝えてもらえるんだろうなあ。

メンバーがそう思ってくれているかは、わからないですけど (笑)
昔の上司が自分にしてくれたように自分もメンバーにそのままを話してもらえるように努めているつもりです。

鎌谷さん

フジイユウジ

ところで、「違和感や自分の感じたそのままを報告・連絡・相談してね」って言われても、わからないメンバーもいるんじゃないですか。
それこそ何を言ったらいいのか、そのままを報告するって何だろうって迷ってしまうメンバーもいるんじゃないですか?

報連相の話と同じ文脈なんですが、「今よりひとつ上の立場や役割になって、自分がメンバーの話を聞く側になった時のことを想像してみてほしい」っていうのもセットで言ってます。
「この先の未来に入社してくるメンバーがあなたに包み隠さず話してくれなかったら、自分たちの事業や物事って前に進められるかな?」って。

鎌谷さん

身振り手振りを加えながら話す鎌谷さん。

フジイユウジ

伝え方上手いな〜!!
メンバーの中には「マネージャーに細かく伝えても意味ないし、自分がわかってれば良いじゃん」ってタイプもいる。
この伝え方なら、自分が困らないかどうかじゃなく、マネージャーに良い仕事をしてもらうことができないって観点を得られるもんなあ。

あと、言葉だけではなく、「包み隠さず伝えることのメリット」をメンバーが感じられるようにしているかもしれませんね。
小さな違和感に対して僕が対応したり、僕ではない他の人が助けてくれる体験をしてもらえるようにするとか。
些細なことほど、マネージャーである私が報連相を受けて終わりとしないようにしてます。

鎌谷さん

フジイユウジ

鎌谷さん、本当に力のあるマネージャーっすねえ……。
メンバーから伝えてもらって終わりにしていない……。
伝えて、マネージャーが満足して終わりだと、メンバーは次から言ってくれなくなっちゃう。

なので、「話してくれた内容に関しては、必ず何かしらのリアクションを返すよ」ということを伝えて、できるだけ実践しています。
メンバーが共有してくれたのだから、何かしら検討が進んだとか、こう考えているよとかリアクションすることが大切だと思ってます。

鎌谷さん

フジイユウジ

マネージャーが「何かしら動いてくれる」って信頼関係に大事ですもんねえ。

「このマネージャーに報連相しても何も動かない」と思われると、メンバーとの間で信頼関係が形成できないんですよね。
最初は報連相してくれていても、いずれしてくれなくなっちゃう。
現場の気づきや状況が上がってこないのは、実はメンバーの責任じゃなく、マネージャー側に省みる点がある可能性もあります。

鎌谷さん

ダメなマネジメント連鎖を断ち切って、良いマネージャーの再生産を。

フジイユウジ

それにしても、鎌谷さんはメンバーや組織内コミュニケーションでの「受け止め力」がハンパないですね。
メンバーが感じる、考えたことそのままの情報を聞いて、咀嚼して事業を推進していくってのは理想のマネージャー像だけど、器が大きくないとできないというか、ハードでタフなマネジメントスタイルだと思うんです。

ありがとうございます。
いまメンバーとして接している人が将来どういうマネージャーになるかって、自分の影響を大きく受けると思ってるんですよ。

鎌谷さん

フジイユウジ

すごく良くわかります。
あまり良いマネジメントではない上司のもとで成功しちゃったプレーヤーがマネージャーになったとき、その人もいずれヤバい上司になっちゃうの、あるある。
そういう連鎖ってありますよね。

新卒の頃に良い上司からマネジメントを叩き込まれて本当に良かったなと思っています。
一方で、あまり良いとは言えないマネジメントをする別の上司とも仕事をしたことがあって。
その両方を体験して、「良いマネジメントを体験しないままマネージャーになってしまう」という人を作ってはいけないという考えになっていると思いますね。

鎌谷さん

フジイユウジ

イマイチなマネージャーが生まれる連鎖を断ち切って、良いマネージャーが再生産されることを目指してるからタフなマネジメントやれてるってことですか!?!

笑いながら驚くフジイとそれを眺める鎌谷さん。

フジイユウジ

これ、ハンパなくすごいな!?
先ほどの「自分が話を聞く側だったら」って問いかけも、その姿勢があるから出てくるんだなあ……

世の中には、マネジメント手法って書籍や記事が溢れてますが、読み聞きしたものより、どうしても体験したことの方が強く印象に残ってしまうので、良いマネジメントに触れることは将来のマネージャー育成において、重要であると考えています。
フジイさんが「タフ」って言ってくれたマネジメントスタイルを徹底できるのも、メンバーが良いマネージャーに触れた経験をしてほしいから頑張れるんだと思います。
自分にとって新卒で出会った上司がいまでも理想なので、その人のおかげですね。

鎌谷さん

まとめ: 素直な対話ができるチームを作る。

  • メンバーが素直に話せる環境をつくるために、あえて”ありのまま”を話してもらう
  • 小さな違和感こそ共有してもらう大切さを伝えていく。
  • 気づいたことを伝えてもらって終わりではなく、リアクションすることで「率直に伝えても、ちゃんと反応してもらえるんだ」と感じてもらえる。
  • 良いマネジメントを体験することが、次世代の良いマネージャーを生むと考えることでマネジメントに真剣に取り組める。

鎌谷さんのインタビューから、「伝える」と「伝わる」の間にある大切な要素が見えてきました。それは、メンバーが安心して話せる環境づくりと、話を真摯に受け止めるマネージャーの姿勢です。

「思ったことは何でも言うべき」というのは正論ですが、働いているメンバーは感情を持っている人間です。
「うまく話せなくても大丈夫」や「まとまってなくて良いよ」と、相手の言葉を受け入れる姿勢を持っていないとチームに率直なコミュニケーションが根付くことはないのだと感じました。

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鎌谷さんnote

(企画・編集:フジイユウジ / 取材・文・撮影:奥川 隼彦) 取材:2025年2月

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