タスク受け渡しのコミュニケーション。仕事の頼み方、受け方を考える。
日々の業務で欠かせないタスクの受け渡し。
しかし、依頼者はやってもらった結果を見て「コレジャナイ」と感じ、作業者としては追加要件が後出しされたことで混乱やストレスを感じる……ということも多いのではないでしょうか。
今回は、タスクを依頼する側・受ける側の双方がスムーズに進められるように、意識すべきポイントを編集部の2人で整理しました。編集部内の雑談を記事化したものなのでライトな内容ではありますが、どうぞ最後の「まとめ」までお読みください。
奥川隼彦
Agend編集メンバー。Webマーケティングを本業にしつつも、組織開発や社内コミュニケーションに興味関心を持ち、Agendにてインタビュー・ライティング・写真撮影などを担当。
フジイユウジ
Agend編集長。
スタートアップや様々な事業の経営やグロースに携わる中で、事業を成長させるためのチームコミュニケーションに興味を持つようになり、仕事のコミュニケーションメディア「Agend」を立ち上げた。
60点くらいを狙うタスクの受け渡し
タスクの受け渡しって、仕事のコミュニケーションの中で当たり前に行われることですが、しんどいこと多いですよね。思ったようなアウトプットにならない、後出しで条件が出てくる。
お互いの苦しさの要因になりがちというか。
わかるー。
そこで、今日は「60点くらいを狙うタスクの受け渡し」の話をしようと思ってます。
SMARTだとか、完了条件を定義しておくだとか、「あるべきタスク管理」は、世の中にたくさん情報があるんで、調べて勉強することはできるじゃないですか。
よく世の中で言われている、タスクの受け渡しでやるべきこと。
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SMARTの原則を活用する
タスクを依頼は「具体的(Specific)・測定可能(Measurable)・達成可能(Achievable)・関連性(Relevant)・期限(Time-bound)」が明確になっているか確認する。
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完了条件と完了期限を明確にする
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タスクの背景や目的を伝える
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タスク管理ツールなどを活用して進捗確認をする
こうしたテクニックを学んで実践すれば、依頼者も作業者も無駄なストレスがない。日常的にやった方が良いし、プロジェクト管理とかサービス開発では大きな失敗をしないよう、やらないといけない。
でも、日々の業務のなかで「徹底してしっかりやるのは難しいし、できない……」って人も多いと思うんです。
わかります。
ちゃんとやるのって、実はほとんどの職場で難しいんじゃないかって気がしています。
ちゃんとできる人は、そのままやってもらうとして(笑)
というわけで、ここからはド正論ではない60点くらいのタスクの受け渡しについて話しましょう。
100点ではなく、60点を共有すると上手くいく理由
それにしてもタスクの受け渡しって本当に難しいし、仕事のコミュニケーションのなかでもトラブルになりやすいですよね。
完了イメージをちゃんと定義するにもスキルが必要というか、やるべきと頭ではわかっていてもなかなか上手くやれないし。
タスクを受ける側である作業者のほうに「依頼者には完了イメージがある」って思い込みがあると上手くいかないことが多いと思いますね。
完了条件とかをスッと定義できなかったり、後出しで要件が出てきちゃうのは、依頼する側に完了イメージがないから起きる。
作業者が「依頼者もちゃんとイメージできてないんだろうな」って前提に立つのは良いですね。
依頼する側だと、タスク完了に近づいてこないと完了イメージが固まってこないってことか。「進んでみないと分からない」ってことの方が多いですもんねえ。
強気な作業者は「完了条件や課題をキッチリ洗い出してから依頼してください」って突っぱねて身を守る人もいますけど、そこはもっと協力的な態度をとった方が良いすよ。そんな意地悪なことを言ってたら前に進まないし。
協力しあって、完了イメージを徐々に具体化していくのが良いと思うんですよ。
たしかになあ。
「目的や前提ってなんだっけ、完了条件を定義できてるっけ」って話でモタモタしてることも多い気がしてきたぞ……
お互いが協力しあいながら譲歩して、スモールステップで実行して、数回に分けた方が早く進むことも多いと思うんですね。
前提や定義を言語化することに時間をかけずに、探索的アプローチをとる。
スモールステップで実行していった方がお互いのイメージが擦り合うのも早いことって確かにありますよね。
でも、結局はそれで後出しの要件が出てきたり、遠回りになるならダメじゃないですか?
もちろん、そうならないように先に要件をキッチリ定義してからタスク受け渡しできるなら、正しくやった方が良いすよ(笑)
それが難しいときは、協力して探索的にアプローチをすべき状況だと思うんです。
依頼者も作業者のどちらもが「部分的な材料しかなく、完了イメージはない」って前提に立って、「だから、まずは進めてイメージを固めよう」って合意をとるのが大事だと思います。
そっか。依頼者と作業者のどちらか片方だけが「これは固まってないことだから、作業しながら確認」って思ってると、上手くいかないですよね。
「目的や前提、完了条件がフワフワしたまま進むこと」が問題なのではなくて、双方が「まだ材料だけで完了のイメージが固まってないので、探索的・段階的に進めましょう」って合意していないことが問題なんだな。
双方が「完了要件も明確ではないが、スモールステップで進めながら固めていこう」って握れていたら、かなりスピードを出せるんですよ。
お互いが探索的にやってるという前提に立てているなら、後出しされた要件すらも手戻りではなく前進と感じるようになるし、最初から後出しで出てくることがスケジュールに組み込めるので。
要件を固めることじゃなく、進め方の目線合わせで課題解決できるんだ……。
作業者が出してきたものを見た依頼者が、事前に分かっていたことかのように「コレジャナイ」と言い出すのは、物事が起きた後にそれらを予測可能だったと錯覚する”後知恵バイアス”そのものじゃないですか。
そういうときって、必要以上に粗を探してしまって、必要以上の手戻りが発生しやすい。これを避けやすくもなると思うんですよ。
仕事を頼む側が考えるべき「60点のライン」
もうひとつ問題なのは「追加で修正を繰り返し続けると100点を目指せる」って考え方だと思っていて。
60点で目的を満たせるのに「より良くしたい」という気持ちから修正を追加し続けちゃうことで、スピードが落ちちゃうし、これを会社やチームレベルで見ると無駄だらけになりがち。
なるほど。
100点を狙いすぎると、完璧主義になって修正し続けないといけなくなるしハイストレスだけど、60点を狙うなら仕事しやすい。
気をつけたいのは、ここで言う60点とは『最低限、目的を満たせそうなアウトプット』ってことです。
作業結果が『目的は満たせるレベルにはあるにはあるけど、直したい点が沢山ある』ってことも多いですよね。でも、60点に到達してるなら修正を加えずに前に進んじゃう。
60点とれてるときに依頼側には「俺は60点で良いと思ってるのに作業者が40点以下で出してくるから、叩かざるを得ない」みたいに言い出わないようにする自制が求められます (笑)
そうなること多い!!
それは確かに現場感覚としても納得できるなー
そうならないように、依頼者と作業者の双方で「60点という最低限を超えるくらいでやろうね」って事前に言っておくんですね。
もちろんタスクや目的によっては60点ではダメな仕事ってのもあります。そういうものは「正しいタスク受け渡し」で事前に定義を詰めておいた方が前に進む。
でも、完璧を求めすぎず、60点を出して前進した方が良いことについては、探索的アプローチで進めるのが良いと思ってます。
60点で十分と思えずに「より良くする」になってしまいがちだから、そこは依頼者が気をつける必要があるんですね。
一方で、作業者も後出し修正がある前提でスケジュールを考えておく、みたいなことは大事になってきますよね。
そのラリーが続く前提だってことを見越しておけば、後出しっぽい修正や追加要件にも対応する心の余裕が持てるような気がします。
「定義する」と「早く進める」を使い分けて、事業やプロジェクトをどんどん前進させていこう。
60点の前に、30点かもしれないプロトタイプ(たたき台)を作るのも有効そうですよね。
一旦形にすると、「これならいいけど、ここを調整したい」と意見が具体的になりやすい。
そうそう。そういう探索的なアプローチが大事で、タスク完了を目指す前のスモールステップとして組み込んでおけると良いんですよね。
依頼する側も「何をどうしたいか」が明確になることが多い。
わかってきたぞ。
これ、タスクという「点」ではなくて、事業とかプロジェクトという「線」で見て、全体を進めることを大切にする考え方ってことですよね?
そうですね。
どんどん次に進める方が、事業やプロジェクトへのインパクトは出やすいから60点で進めた方が良いこと多いんですよね。
「定義をちゃんとすべき60点ではダメなもの」と「探索的に進められるタスク」を切り分けせずに、どちらでもない進め方をしてることが一番リスクが大きいと思ってますね。
あ、この「60点でいいから」という話は、事業とかプロジェクト進行のリスクコントロールの話なんだ。
あ、そうですね。「定義する」と「早く進める」の使い分けでリスクコントロールしてるってことだ。
無自覚だったけど、言語化してもらったなあ(笑)
まとめ
まず最初に:この仕事は「探索的に進めるか、定義を重視するか」を確認する。
定義重視の場合
・プロジェクト管理の原則(SMARTなど)を使って完了条件や要件を明確化。
・進捗を確認できる、適切なサイズにタスク分割をする。
探索的アプローチの場合
・双方が「完了イメージが固まっていない」認識があるか確認する。
・スモールステップで進めながらイメージを固めることを合意する。
・後出しの要件は必ず出るものとしてスケジュールを組む。
探索的アプローチのためのチェックリスト
依頼する側
✅ 探索的に進めることの確認と合意。
✅ 60点の基準を共有、20~30点のプロトタイプを素早く出すことの合意。
✅ プロトタイプを出した後の変更・後出し要件をスケジュールに組み込む。
受ける側
✅ 探索的に進めることの確認と合意。
✅ スモールステップ的に20~30点のプロトタイプを素早く出す。
✅ プロトタイプを出した後の変更・後出し要件をスケジュールに組み込む。
(企画・編集:フジイユウジ / 取材・文:奥川 隼彦)2025年1月