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職場の「余計なこと言わんとこ」という空気は、どうして生まれるのか。

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会議で「特に質問はありません」って言っていたのに、終わったあとに個別に話をしていたり、「さっきのあれって〜」 と別の場所で議論される……職場にそんな雰囲気はありませんか?

今回は、職場の「余計なこと言わんとこ」という”場を支配する空気”が、どうして生まれるのかをAgend編集部のふたりで話してみました。対策についても話していますので、どうぞ最後の「まとめ」までお読みください。

フジイユウジ
フジイユウジ

Agend編集長。
スタートアップや様々な事業の経営やグロースに携わる中で、事業を成長させるためのチームコミュニケーションに興味を持つようになり、仕事のコミュニケーションメディア「Agend」を立ち上げた。

奥川隼彦
奥川隼彦

Agend編集メンバー。Webマーケティングを本業にしつつも、組織開発や社内コミュニケーションに興味関心を持ち、Agendにてインタビュー・ライティング・写真撮影などを担当。

マネジメントを知らないニンゲンが権力を持つと、「部活のヤバい先輩」みたいになる。

リモートからオフィス出社に回帰みたいなニュースが増えてますね。
出社回帰になるのは、対面コミュニケーションの良さがあるからでしょうけれど、一方で「やっぱり目の前で見ていないとダメだ」みたいな人がいるからじゃないかと。

奥川隼彦

フジイユウジ
そうですね〜
個人的にはリモートでコミュニケーション困ったことはないけど、対面でないとコミュニケーションロスが出てた組織には良いことなんじゃないですかね。
ただ、マネージャーが「見てないと仕事しないだろう」って疑ってるから出社させてるなら、その時点でもうおしまいですけど。

もうおしまい(笑)
たしかに自分だったら「監視されてる」って感じるだけでめちゃくちゃイヤだけど、サボっちゃう人もいるでしょうから……

奥川隼彦

フジイユウジ
それって、「監視することで、サボっていない大多数の人のパフォーマンスを落としてでも、一部のモラルが低い人を監視したい」という、個別最適をやってるわけですよね。
世の中のマネジメント本でも、人事系の情報でも「社員がクリエイティブな発想や動きができる環境を作ろう」ってあらゆるところに書いてあるのに。

たしかに、言われてみればそうですね。
それなのに、監視だとか命令で強いるようなマネジメントスタイルが残り続けているのって、なんでなんですかね?

奥川隼彦

フジイユウジ
その方が成果につながるって思い込みがあるからでしょうね。
現場のメンバーに対して「自分だったらもっとがんばるのに、こいつら全然やらないなー。やりさえすれば成果が出るのに!」って思ってるから、監視や強制がいるんだと勘違いしちゃう。
会社がマネジメントを教えてないのが原因だけど、成熟していないやつが権力を持つと、中高生の部活のヤバい先輩みたいに強制とか監視とかをやり出すんすよ。

ああーーーー
部活にいるヤバい先輩ね(笑)

奥川隼彦

フジイユウジ
感情的に追い込んだ方がミスをしないとか、自発的に動くはずだって誤解をしてるんですよね。
そんなことしたら、メンバーは自律的どころか「上司が言ってることやってます」モードになってしまうわけで、良い仕事できるわけないんすよ。

上司が優しければ、会議で発言するわけでもない。

フジイユウジ
ここまでマネジメントのせいみたいな話しちゃったけど、こういうのはだいたいメンバー側も共犯なところありますよね。
メンバー側にある「猜疑心」とか「疑心暗鬼」によって増幅していることが多いんで。

上司が怖いから黙って言うことを聞く、みたいな話とは違うんですかね。

奥川隼彦

フジイユウジ
上司がヤバいやつだと黙っちゃうのは当然として、上司が怖い人じゃなくても黙りがちだったりしません?
例えばですよ、「拙い意見でもいいから自分なりに良いと思うこと言う」だとか、「理解できてないと感じたことを質問してみる」って、素晴らしいことですよね。
でも、それをせずに黙っちゃう状況って、ありますよね。
会議で言わずにあとで個別に聞きにいくとか。

あるある。
上司やチームメンバーがキライってわけではないけど、好きなように意見を言ったり、質問する雰囲気ではないこと、たしかにありますね。

奥川隼彦

フジイユウジ
社会的なストレッサーのひとつとして『社会評価脅威』ってのがあるんですね。

社会的評価脅威

他者に自己の重要な側面(能力や価値など)を否定的に評価されるかもしれない状況で生じるストレス要因。

上司に限らず、同僚や部下が相手でも、「使えない」と見なされることが影響しうる環境では「脅威」が強まりやすい。

個人ごとの不安の感じやすさではなく、逃がれにくさや社内の同調圧力といった実質的な脅威レベルや環境についての概念。

フジイユウジ
社会の中ではなにをしても「相手に評価される可能性」があって、それがストレス源になるって話ですね。
他人が自分のことを「的はずれなこと言う人だとか、空気読めないやつだと思われるかも」って不安につながってる人が多いんじゃないかな。

あー、わかるなー。
意見や質問をしても褒められない的はずれなことを言うかもしれないなら、黙ってる方が安全な選択をしていることになりますよね。
会議で発言してみたけど、相手から賛同とか返ってこないなら「もう言わんでおこう」ってなるのは、自然なことなのかもしれない。

奥川隼彦

フジイユウジ
そうなんですよ〜
組織行動論とか経営学では Employee Silence (従業員の沈黙) って言うらしくて、仕事の懸念だとか改善アイデアを意識的に共有しない行動って、日本だけじゃなく世界共通みたいなんですね。
チームの目的だとかに向き合う環境があれば「拙い意見でも言ってみる」とか「理解できてないことを質問する」って勇気を持てるけど、他人の感覚を勝手に想像して「バカとか無能と思われる」って脅威のように捉えちゃうと、不幸なチームになりますよね。

そうやって防御反応が起きるのか……。
これって、言いたいことを言えないことを上司の責任にしがちだけど、メンバー個々が持ってる『不安』が強いと、チームを良い状態にするのが難しくなるってことですか……?

奥川隼彦

フジイユウジ
そういう個人による「脅威の感じやすさ」はあるんですけど、個々人の特性の話だけじゃないんですよ。
目的(コト)ではなく、「上司が良い」って言うことを目指すとか、「怒られないこと・ミスしないこと」を目指すチームは、当然に『社会評価脅威』が強い環境になります。

上司がどう思うかを探り続けるような仕事、絶対イヤだな〜(苦笑)
ずっと正解がわからないまま、上司が良いと言いそうな答えを探してるのは、目的(コト)に向かうのとは真逆ですよね。
より良い成果を出すことよりも、怒られない報告が優先されるやつだ。

奥川隼彦

フジイユウジ
そういう場では、みんな怒られたことを二度としないように萎縮するし、怒られないように動くことが最優先されて、メインタスクが上司や周りの印象管理になるんですよね〜
そして、上司側も「怒るか、命令するかしないと部下は動かない」って、部活のヤバい先輩みたいな思考になる(笑)

あああああ、話がつながった!!!
チーム全員で「失敗してないように見られる」ような空気を作ってしまっているのにメンバーは「アイツ(上司や同僚)のせいで雰囲気が悪い」、マネージャーは「メンバーは自律的に動けてない」って周りのせいにするってことか。

奥川隼彦

雰囲気が良いチームなら解決するわけではない。

でも、やっぱり上司が厳しいから、部下もそうなるのでは……という気持ちになりますね。
優しい上司がいたり、チームの雰囲気が良いなら問題ないような。

奥川隼彦

フジイユウジ
いや、優しい上司でも普通に『社会評価脅威』はある。そこがこの話のキモなんですよ。
『社会評価脅威』によって、反射的に黙ったり、賛同するフリをしちゃう。場の空気が、ニンゲンのデフォルト防御反応を引き出してしまうという話なんですよ。
上司が優しくて怒らないし、チームみんなは仲が良いとしても Employee Silence (従業員の沈黙) が発生してることありません?

たしかに発生してますね。
現代の仕事は、なにを言っても、なにをしても社会評価脅威があるような気がしてきた……。
質問したら、物わかりが悪いと思われるかもしれない。
反論したら、他人を否定する人と思われるかもしれない。
改善案を出すのも、採用されないなら言う必要はないと感じる……。

奥川隼彦

フジイユウジ
そう。
自分の発言を周りのみんなが正解だと言って受け入れてくれる自信がなければ、社会評価脅威から不安を感じる。そういう場では「思ったことを言ってみる」なんてできなくて、正解じゃなければ言うことができなくなるんですよね。
そういう場で発言できるタイプしか活躍しなくなる。もったいない。

だから会議では、みんな「特に質問はありません」って言ってたのにあとで個別に質問したり、別の場所で「さっきのあれって〜」って言ったりするのか。
言ったほうが損をする、みたいな空気が支配してるというか……。

奥川隼彦

フジイユウジ
みんなでチームの状態を悪化させてるんだけど、黙ってる人は自分を被害者だと思ってるんですよね……。
これが続いてると、失敗から学ぶことはなくなって組織学習が止まるし、失敗に見せないようにする動き方ばかりが熟練していく

わかる〜
周りが悪いっていう自己正当化が洗練されていって、組織内の当たり前になるの怖い〜

奥川隼彦

フジイユウジ
上司やチームメンバーに対して「何を言えば自分は失敗しないのか」という正解を探してるうちは、上司が優しかろうと、怒らない人だと分かっていようと不安なんですよ。
むしろ、厳しい上司が喜びそうなことが正解っていう「ヒトに向かう」方が、わかりやすいし、安心って人は多い。
上司の期待に応えてるんだから正しいって思って、どんどん環境を悪くしていく人っていますよね。

あっ、ヒトを見ないでコトを見ろってそういうことか〜
厳しい上司に「これが違う」とか「こっちにしろ」って言われながら、それに従うのが好きな人っているもんなあ。
上司が厳しい方が「答え」が分かりやすいけど、それだとコトに向かうことができなくなっていくのか。

奥川隼彦

フジイユウジ
ここで言いたいのは、公開の場は誰にとっても『社会評価脅威』であり、不安がデフォルトだってことです。

人間が持つデフォルトの防御反応って考えると、わかりやすいですね。

奥川隼彦

フジイユウジ
そう。チームの目指していることより、自分の安全を優先するのはニンゲンの持つデフォルト機能。
「この防御反応は、脳と神経にとって正しい反応です」ってのは言い過ぎかもしれないけど、そう考えておくくらいで良いと思うんです。
「成果(コト)に向かうために率直に話そう」とか「心理的安全性を確保しましょう」って、正しいことではあるんだけど、そのデフォルト反応に反することだから、とても強い理性とか勇気が求められるんですよね。

なるほど。
「コトに向かう」って言うのは簡単だけど、マジで難しいですね。
上司がやるべきとか、部下がやらないって話じゃなくて、ニンゲンのデフォルト搭載されている防御反応に抵抗するための空気をみんなでつくるんだって理解が必要なのか。

奥川隼彦

で、どう職場をマシにすればいい?

心理的安全性が足りない、みたいな言葉だと理解できなかったことまで肌感でわかった気がします。
ヒトではなく、コトにベクトルを向ける。ここが大事かつ難しいところなんだなあ。

奥川隼彦

フジイユウジ
ニンゲンは、自分が上手くいかないのは状況のせいにしやすくて、他人の行動が上手くいかないのは相手のパーソナリティのせいにしやすいんですよね。
だから、上司はメンバーに対して「動かないな〜」って言うし、メンバーは上司とかチームに問題があるって言いがち。

ついつい本能的な防御反応が出てしまうのが当たり前なんだけど、それを相手のせいだと捉えてしまうってことですね。
そんな「アイツは動かない」と「上司のせいでチームの雰囲気が悪い」ってお互いに思ってるような空気を、どうやって変えればいいんですかね?

奥川隼彦

フジイユウジ
教科書通りの回答になっちゃいますけど、、、
何を目指しているのか、何故チームがそれを目指すのかを腹落ちするまで目線合わせするとか、自分たちはなぜ集まったチームなのかを自分たちの言葉でインセプション・デッキを作るってのが必要なんだと思いますよ。
それぞれが気になること、他の人もやってくれると働きやすいことを話し合って、書き出していくっていうのが有効なんだと思います。

「インセプションデッキ」と「ワーキングアグリーメント」

インセプションデッキは、目標やチームの目的などを関係者全員が関わって自分たちの言葉で決め、共有・合意するもの。

ワーキングアグリーメントは、仕事のスタイルのズレや、気になることの違いを埋め、チーム全員が合意した働き方の約束をまとめたもの。上司や会社が決めた「ルール(規則)」ではなく、みんなが自発的に合意している点が重要。

上司が決めたルールじゃなく、みんなでコミュニケーションのガードレールを決めていくってプロセスが大事ってのは、わかる気がします。
でも、これらを作ったところで不安はなくならない気がするんですよね……

奥川隼彦

フジイユウジ
いい指摘ですね〜。
ニンゲンには反射的にやってしまう防御反応があって、「どんどん発言しよう」って書き出されたからって不安はなくならない。
今回、話したかったことはここ。
一緒に働いている人たちが、日常的にインセプションデッキに書かれているように動いているって「事実」があると、インセプションデッキに書かれたことが信用されるようになる。ワーキングアグリーメントも同様です。
みんなで決めたことが「正しさ」を発揮してるって事実が積み重なって、はじめて信頼が醸成されるんすよ。

そうか〜
ガードレールやルールづくりだけで安心することはないけど、合意されたことを守ってくれてるチームだという事実が積み重なって、はじめて信頼関係が醸成される。
自分の体験的にもよくわかります。
良いチームってそうやってできるんだな〜
書かれている合意が守られていなければ、みんな書かれていることを信用しなくなるし、自分も大切にしなくていいやってなる。

奥川隼彦

フジイユウジ
ですです。
チームがしんどくなるのって、こういう小さな積み重ねじゃないですか?
身を守っちゃうニンゲンが作る空気を変えるには、自分たちが大切にしていることが守られてるって事実を積み重ねるしかない。
ルールとかガイドラインだけじゃ足りなくて、それが強制されていなくてもみんなが大切にしているって事実だけが信頼を作るんすよ。

まとめ: 「大切なことが守られている」事実を積み重ねる

「余計なこと言わんとこ」は個人のマインドだけの問題ではなく、人間のデフォルトの防御反応です。この場を支配する空気を変えるには、ルールや命令で押さえつけるのではなく、自分たちが大切にしていることが守られてる事実を積み重ねる取り組みが必要です。

  • 成果を良くするより「怒られないこと」が優先されると、上司や周りにどう思われるか「印象管理」がメインタスクになりやすい。チーム全員で「失敗してないように見られる」空気を作ってるのに、互いに周りのせいにしてしまう。
  • 目指すものと理由を揃え、「インセプションデッキ」や「ワーキングアグリーメント」のようなコミュニケーションのガードレールを自分たちの言葉で作る。上司や組織が作ったルールではなく、自分たちで合意した意思になっていることが重要。ただし、作っただけでは安心できない。
  • 自分たちが大切にしていることが守られてる事実が積み重なって、はじめて信頼が醸成される。ルールやガイドラインが守られることが、信頼を作る。

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(企画・編集:フジイユウジ / 取材・文・撮影:奥川 隼彦)会話:2026年1月

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