上司に言いたいこと言える、イエスマンをやめるための「部下力」
なぜ、あの人は上司への提言が通るのか─────
今回のAgendは、「上司を支える仕事がうまい人たちは『部下力』といえるような共通の特徴があるのではないか?」というテーマを “組織開発するマン” こがねんさんと一緒に掘り下げていきます。
言われたことを”やってる”のに評価されていないと感じている方、上司に言いたいことを伝えられていない方、部下の育成に悩んでいる方にも役に立つと思います。
どうぞ、最後の「まとめ」までお読みください。
こがねん|組織開発するマン (小金 蔵人)
大手化粧品メーカー 人材開発・組織開発責任者。
1998年に味の素株式会社に入社。2006からヤフー株式会社(現・LINEヤフー株式会社)。2016年からは人事部門で一貫して人材開発・組織開発を担当。2020年に株式会社ZOZOテクノロジーズ(現・株式会社ZOZO)へ転職。2025年より現職。個人としても組織開発アドバイザーとして複数社の支援をしている。
【Agendインタビュアー】 フジイユウジ
Agend編集長。
スタートアップや様々な事業の経営やグロースに携わる中で、事業を成長させるためのチームコミュニケーションに興味を持つようになり、仕事のコミュニケーションメディア「Agend」を立ち上げた。
チームやプロジェクトを前に進める「部下力」
今日は「部下力」について話したくて、お時間をいただきました!
こがねんさんは、複数の大企業を組織開発という目線で見てきているので、「部下力」についてユニークな視点で語れるんじゃないかなと。
「この人、部下力、高っ!」っていう人っていますよねー (笑)
上司から見てチームで成果を出すためにまさにいま必要な動きをしてくれている、そういう人。
よく「上司は偉いんじゃなくて、マネジメントという役割でしかない」って言うじゃないですか。
それって、つまりマネジメントするには部下より高い能力が必要というよりも、部下とは別の役割をこなせる能力が必要ということですよね。
その部下バージョンとして、良い仕事をするために部下という役割を演じられる能力についても話せるんじゃないな、と考えて「部下力」というテーマにしたんです。
個人として作業をこなすための職能スキルって意味ではなく、部下力 = 組織の中で「部下という役割」を果たすことで仕事を前に進める力ですね。
いいですねー、この話だけでご飯3杯はいけるテーマです (笑)
僕自身の部下力が高いかどうかは正直よく分かりませんが、色々な会社・組織で、部下力の高い人たちを見てきて、感じていることをお伝えできればと思います。
イエスマンや御用聞きになるのは「部下力」をアップデートできてないから。
「部下力」は、上司に媚びるだとか、作業スキルって話じゃないと思ってるんですけど……
上司が言ったことをやるだけの「イエスマン」になることが部下力だと考えている人って結構多そうなんですよね。
むしろ、上司の言うことだけをやるイエスマンって「部下力」をアップデートできていないってことなんじゃないかと思ってますけどね。
もちろん組織や上司が目指していることとズレた行動するよりは、イエスマンのほうがマシですが、上司の決めたことをやるだけの人って本当に価値ある成果を出せるところまでいかないですからね。
あーなるほど。
上司が言ったことが常に正解って状況ならともかく、不確実性の高いプロジェクトや事業だと、上司の決めたことだけやっていても成果は出ないですもんね〜
それが上司の御用聞きしかできないレベルでぶつかる、「イエスマンの壁」ですよね。
イエスマンの壁っていい言葉だな〜。
流行らせたい (笑)
イエスマンって上司からすると言ったことやってくれてラクではある。
でも、目的に向かってより良くなるようにコトを見て動くんじゃなくて、上司というヒトを見て動くから、時には成果を出すための邪魔な存在になり得るんですよね。
そうです、そうです。
イエスマンのままだと「このやり方では本来の目的を達成できないんじゃないですか?」って言えないまま仕事をして、本人も周りも苦しくなる。
上司の指示をこなせない部下力ゼロから始まって、言われたことをやる部下力1.0とか、質高くやれるようになる2.0……みたいな段階があると思うんですね。
でも、このままだと「イエスマンの壁」は超えられない。
部下力の段階。「期待を超える段階」になっても「イエスマンの壁」は超えていない。
上司の決めたことだけやっていても成果は出ないって話の通り、イエスマンのままだと上司が見えていないアプローチをとって会社にとって必要な成果を出す、みたいなことができないんですよね。
成果を出すためには、上司に No を言ったり、こっちの方が良いとか提言をしないといけないわけで。
そこがポイントですよね。
No や提言を出した時に「こいつ、歯向かってきたか」と上司から思われる人と、「さすが、良い提案するね〜」ってなる人に分かれるわけですよ。
そのとき正しいことを言っているかどうかも大事なんですが、それ以上に相手が信頼してくれるように日々の仕事をやっていないと歯向かってきたと思われるんですよね。
ともかく、上司の考えを一番知っている人になる。
イエスマンの壁を超えるような「部下力」を磨いていく方法ってあるんですかね?
僕が「部下力」と聞いて、真っ先に思い浮かべる人がいるんですけど、その話していいですか?
その人はどんな上司のもとでも仕事をうまく進めるんですよね。社内でも賛否両論あるクセの強い人の部下になったときも、チーム力が発揮されていた。
で、「どうしてあの上司とうまくやっていけてるんですか?」って質問したんですね。
そしたら「こがねんさん、簡単ですよ。上司が変わった時はまず、新しい上司に一ヶ月ぐらいへばりつくんです。」って答えが返ってきて。
そう。
とにかく最初に徹底的に一緒にいる時間を作って「どんな人なのか?」をインプットしていくんだと。
性格はもちろん、何をやりたい人なのか、何が嫌いか、仕事の進め方のスタイルまで、相手を知るまで徹底してへばりつく。
他者を知ることについての行動量が、なんか異常なんですよね。
そういうタイプの人。
その人は、上司が「潜在的に考えていること」を一番知っている人になるっていうのが初手で。
つまり、やりたいことや重視することを知ってるわけだから、あとはそれを「とにかくやるだけ」という状態を作るんだと言っていました。
僕自身もできるだけこれを実践するようにしてます。
上司が「潜在的に考えていること」を一番知っている人になる!!
多くの会社員は、上司のことを知ろうとすることが怖いとか、どう接していいのかわからないって戸惑ってる人が多いけど、やっぱり相手を知るための行動量を増やせる人だけが得られる情報ってのがあるんだなあ。
上司って仕事を進める上で最大のビジネスパートナーだと思うんですよね。
だから、上司が怖いとか、上司と距離を置きたいなんて言ってるとゴールがわからないまま仕事してる状態なわけだから、部下力ゼロになっちゃいますよね。
どう動いたらいいのかわからないのに仕事をしなくちゃいけないから、部下側もストレスが大きくて、とても辛い。
相手を知る努力をしないまま、ずっと苦しい仕事をしている会社員、めちゃくちゃたくさんいそう。
だけど、「知る」を徹底することはあなたが想像している10万倍くらい重要で、それをやらないとラクにはならないんですよって教わってないもんなあ。
そういう人は、上司側に変わってもらいたがるんですよね。
でも上司に変わってもらいたがってる部下で上手くいっている人を見たことがありません。
僕は、上司は変えられる変数ではなく、まずは定数であると捉えて、定数である上司を「知る」ことで自分の行動を変える方がよっぽど早いし、できることが多くなるんじゃないかと思っています。
「知る」と「やる」のループを回せるようになる。
最大のビジネスパートナーである上司のことを「知る」の次の段階は「やる」があるんですよね。
まず上司が大切だと考えていることや、優先順位が高いと定義したことを実現しようとちゃんと動く、進める、一旦やってみる。
なるほどな〜。
まずは上司が潜在的にどんなことを目指しているか、そのために重視してること、どう意思決定する人なのかを理解する。
深く理解をした上で「徹底的にやる」が実行できるようになるってことか。
そうそう。何よりもまず徹底的に知ることが先なんですよね。
「中途半端に知ったことをやる」だと、ピントが合っていないマトハズレなことしかやれない部下になる。
なるほどな〜。
「知る」「やる」も中途半端だと、上司の考えてることがわからないまま言っていることをこなそうとして、イエスマンとしても能力が低い状態になるんだなあ。
壁を超えるどころじゃなく、言われたことをこなすので精一杯になりますよね。
「上司が潜在的にやりたいことを徹底的に知る」→「知ったことを徹底的にやる」→「徹底的にやるためにさらに知ろうとする」というループをぐるぐる回せるようになると「部下力」がアップデートされていくサイクルに入れると思っています。
「知る」と「やる」を徹底的に回してる人の信頼貯金がジャリンジャリン貯まっていく様子が目に浮かぶな〜(笑)
上司の気持ちを想像してみたら、わかると思うんです。
何が重要であるかを目線合わせしようともしない、指示した作業をこなすだけの部下を信頼できると思いますかって話で。
考えを知ってくれて、やってくれる部下がいたら、そりゃ信頼しますよね。
めちゃくちゃ、わかるなー
「知る」ことを徹底できないまま「やる」だけを繰り返している人っているじゃないですか。
「やろうとしてるのはわかるけど、ズレてんだよなー」って上司に思われちゃう典型ですよね。
そしてその状態を続けていても分かり合えないから、部下側も「うちの上司はわかってくれない」「評価してくれない」って愚痴を言うだけの人になっちゃう (笑)
上司と部下って、お互いが影響する相互依存関係なんですけど、フジイさんが言ったような感じでイマイチな関係にするキッカケを部下側が作っちゃうこともあるんですよね。
成果を出すために上司に変わってもらうとか、上司に動いてもらうには、まずは「徹底的に知る」「徹底的にやる」を繰り返して、関係をポジティブにすることが必要なんですよね。
Agendの記事にもなっていますが、富士通で10万人を動かすプロジェクトをやった
タムカイさんという方がいて、
「上司のオーダーに応えていきながら、オーダーされていない『期待を超えたもの』を盛り込んでいく」って話していたのを思い出しました。
あー、それはとってもイイ話ですね。
「徹底的に知る」「徹底的にやる」ことで、期待を超えられるようになると思うんですよね。
そして時には「Noと言う・提言する」ことで、上司が見えていなかったことまで成し遂げてくれる、本当に信頼できる人になる。
ここまでいけたら、上司を動かせる部下になっている気がします。部下力3.0とでも呼びましょうか。
上司に言いたいことを言える部下が生まれると「上司が成長」する!?
部下力3.0みたいな、本当に力がある人って
「チームのために上司をもっとワークさせるには」
「本当に必要な結果を出すために上司にどう動いてもらうか」
って観点を持ってコミュニケーションしてると思うんです。
わかるな〜
マネジメント側としても「部下にどう動いてもらうか」をひたすら作る作業してるのって、成果が出にくいし、苦しいんですよね〜。
「部下の言ってることを実現するマネジメント」に切り替えられるのって、めちゃくちゃ嬉しいんですよね。上司を動かしてくれる部下最高〜(笑)
そう!!!
上司は、部下が言うことを実現するために動けるようになる。
ここまで「徹底的に知る」「徹底的にやる」を繰り返してきたことで、組織やチームにとって本当に必要なことを理解できているから、「時にはNoと言う・提言する」ができるし、部下が次の施策や新たな目標を提示できるようになって、上司を動かす側になるんですよね。
上司を知ることで成果を出していた人が、市場や社会を見て成果を出せるように変わるのがここなのかも。
「知る」「やる」から得た経験と知識で新しい仕事を生み出す部下3.0で、イエスマンを卒業。
「やりたいこと・なりたいキャリアプランはないから、他の人をサポートするだけが好き」ってタイプの人でも、このルートを通っていくと「やりたいことではないけど、やるべきことは見つけられた」って仕事レベルに変わるんだろうな〜(興奮)
「守破離」みたいな話ですが、まさにそれですね。
部下が成長しているだけじゃなくて、この流れによって部下に任せられる上司も生まれるんですよ。
マネジメントにおいて「任せる」が難しい、って状況は本当に多いですが、それって上司側だけが原因じゃなくて、部下側も任せられる状態を作ってあげられていないことがほとんどですからね。
おおおおおおお。
これ、どうやったら良い上司が生まれるかまで説明されている、スゴい話じゃない!?
部下がより良い部下になることで、上司もより良い上司になることができるんです。部下が上司を成長させる状態ですよね。
相互にポジティブな影響を創っていって、まずは上司部下の単位で「小さな良い組織」になっていく。
これこそが理想的な上司部下の関係だと思いますね。
自分らしく会社員をやっていくために、部下力を高める。
それにしても、ぼくは明らかに部下力ゼロなんですけど、たまたまそれでも生きていけるキャリア通ったからラッキーだったんすよね〜
もし「部下力」が必要とされている仕事していたら、ひたすら会社の文句言ってるやつになっていたかもしれない (笑)
最低限の部下力──── 部下力1.0がないと、会社内でサバイバルできずに会社員としては非常にキビシイ状態になりますよね。
会社員としては言われた苦しい仕事をずっとやり続ける、何とかサバイバルしようとする状態が続くことになるので、とんでもないストレスを抱えて会社員人生を続けることになるじゃないですか。
だから、結局「自分がラクになるためにも」部下力を磨く必要があるんですよ。
これ、いい話だな〜
部下力を高めるために踏み込んだ方が、苦しみとかストレスが軽減していくってことだよな〜
そうだと思います。
会社員って、部下から始まるし、ほとんどの人は部下として会社員人生を終えるわけですよ。
であるとしたら、自分が言いたいことを言って、やりたいことをやって、自分らしく会社員をやっていくためにも、部下力を高めることが、一番の近道になると思っています。
部下力を高めることで、上司に言いたいことを言っても受け入れてもらえるようになるんですからね (笑)
こがねんさんの1on1記事
まとめ: 徹底的に「知る」からはじまる。
上司を支えながら成果を出せるタイプの人をたまに見かけるたびに「コミュ力あるな〜」と雑に捉えてしまっていましたが、こがねんさんと話していくうちに「部下力」をどう捉えるべきなのかがハッキリしました。
- イエスマンや御用聞きになるのは「部下力」がアップデートできてないから。
- 多くの場合は、そもそも「知る」が足りない。「やる」より前に「徹底的に知る」から始める。
- 「徹底的に知る」→「徹底的にやる」の繰り返していくことで「期待を超える成果」が出せるようになる。
- 「時にはNoを言う・提言する」をサイクルに加えることで「上司が思いつかない価値」や「上司を変えながらチームのためになる価値」を生めるようになる
- 「イエスマンの壁」を乗り越えて、新しい仕事を生み出す「部下力3.0」を手に入れることで、言いたいことを言って、やりたいことをやれる、自分らしい会社員人生が手に入る。
- 「優れた部下力」は、上司をも成長させる「良い会社組織」の起点になれる。
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こがねんさん note
(企画・編集:フジイユウジ / 取材・文・撮影:奥川 隼彦)取材:2025年8月