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1on1マスターガイド ―――組織開発するマン・こがねんさんに聞く「ほんとにすごい1on1」 

今回のAgendは、”組織開発するマン” こがねんさんに『1on1』についてお聞きしました。
こがねんさんこと小金 蔵人さんは、ZOZOで組織開発の部門長として活躍する傍ら、個人でもさまざまな企業の組織づくりに貢献しています。

もともとはヤフー(現:LINEヤフー株式会社)で1on1文化と出会い、これまで1on1の活用を深く考えてきたこがねんさんは「いい1on1をやる必要はない」と言い、どのように1on1を捉えるとチームコミュニケーションが良くなるのかを教えてくれました。

上司・部下側どちらにとっても発見のある「1on1の本質」が語られていると思います。ぜひ最後まで読んでいただければ幸いです。

こがねん/小金蔵人さん


こがねん / 小金 蔵人

株式会社ZOZO 人自本部 組織・人材開発部 ディレクター。
1998年に味の素株式会社に入社。2006年にヤフー株式会社(現・LINEヤフー株式会社)に転職。2016年に人事部門に異動後、一貫して人材開発・組織開発を担当。2020年にZOZOグループに転職。2023年より現職。個人でも組織開発アドバイザーとして複数社の支援をしている。

フジイユウジ


【Agendインタビュアー】 フジイユウジ

Agend編集長。2011年バンダースナッチを創業。
様々な事業の経営やグロースに携わる中で意思決定のための会議や組織論、チームコミュニケーションに強い興味を持ち、Agendの運営を開始。

「相手の困りごとを聞くのが1on1」をやって、手痛い思いをした。

フジイユウジ

こがねんさん、 X(Twitter) や note での発信をいつも楽しみに拝見しています!
今回のテーマは「1on1」なんですが、まずはこがねんさんを知らない方向けに自己紹介からお願いできますか?

現在はファッションテック企業で組織開発の部門長を務めつつ、個人でも組織開発・人材開発の支援をしています。
前職はヤフーなんですが、そこで新規ビジネス開発やサービス企画に携わっていたら30代が終わって、40代にさしかかるタイミングで上司からもらった「本当にやりたいことは何?」という問いかけをきっかけに、今後のキャリアの軸を「人と組織の活性化」にしたいと考え、人事部門に移ることにしました。
人事に移って、人材開発や組織開発に携わるようになって「ようやく天職に出会ったのかも」という感覚を持ちましたね。

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

あ、人事部門に希望して移動したんですね。
ずっと人事とか組織関連のことをやっている人なんだと思ってました。

そうなんですよ。
1on1に関わったのは人事や組織開発に関わるより前なんですよね。
ある企画部門にいたときのことで。
会社から部下と1on1するように言われて研修を受けたんで、「なんか、人事が変なことやれって言い始めたなー」と思ってました(笑)

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

変なこと(笑)

で、その企画部門のマネージャーになったので、1on1やることになるわけです。
部下の中には、もともと同じ部署の同年代の同僚だったけど、その部署に後からきた自分の方が上司になっちゃったという関係の人もいて。
この状況だけで、あんまりうまくいかない感じが漂うじゃないですか。
元々、その人とは仲が悪いわけじゃないけど、決してソリが合う同士でもない、みたいな関係だったので、初めて1on1やるとなったときにこっちも緊張してたんですよね。

こがねん/小金蔵人さん

そこで、そういえば人事が研修か何かで「相手が何に困ってるかを聞くのが1on1だ」みたいなこと言ってたなーって思い出して。
じゃあ、その通りにやるかと「あなたはいま何に困っていますか?」と質問してみたら、いきなり「あなたに困っています」って言われたんです。

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

えっ、きっっつ。
めちゃくちゃキツい……

1on1はじまって最初の1分でいきなりそんな険悪な雰囲気になったんで、さすがに動揺しましたね……。
とにかく取り乱さないようにと「ではその困っている状況をどうやったら解決できるか、一緒に考えさせてもらっていいですか」って絞り出すように返したんですけど、これ口でそれっぽいこと言ってるだけで、ぜんぜん解決の話ができるような余裕なんかないんですよ。

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

その状況で、それだけちゃんと言葉にして返せているだけでもすごいですよ……

これ、いまとなっては色々なところで語らせてもらってて「1on1は研修して上手くいくとかじゃないよね」というリアルな話ができるので、この体験が貴重な宝物みたいになってますね。
当時はキツかったですけど…。

こがねん/小金蔵人さん

都合が悪いことが可視化されるのが1on1

フジイユウジ

ここ数年で1on1ってめちゃめちゃ広まって、どこの会社でもやるようになったじゃないですか。
ただ、1on1でちゃんと効果出せてる会社は少ないんじゃないかと思ってるんですよね。
やらないよりは良い、くらいの効果しか出せてないというか。

「1on1は絶対に良いこと」みたいな感じで流行ったんですけど、実際は「1on1をやるから良いことが起こるわけじゃない」っていう罠があるんです。
むしろ1on1をやると、いろんな問題が可視化されていってしまう。
さっきの僕の「あなたに困ってます」の話でわかると思うんですが、関係性が悪いときにそれが可視化されちゃう。
そういう、都合が悪いことが可視化されるのが1on1だと思っていて。

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

おおおお、都合が悪いことが可視化されるのが1on1 !!!
たしかになー。
都合悪いことがわかるのってメリット大きいけど、覚悟してないのに問題を直視できる人なんていないですよね。

ですよね。
1on1をやると都合が悪いことが起こっていくよ、って覚悟を持ってやらなきゃいけないんですけど、本や記事に「みんな1on1やればいいことあるぞ」みたいなことばっかり書いてある。
いやいや、実は1on1って関係性を見定めるリトマス試験紙なんですよ、って僕は言ってるんです。

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

関係性を良くするためとかじゃなく、見定めるもの……。

1on1やって、いままで見えてなかった問題が可視化されると、みんなあわてるじゃないですか。
1on1は関係性を良くするものと思い込んでいるから、問題が見えると「どうしたらそれを解決できる、いい1on1になるか?」と考えるようになってしまう。1on1 第2の罠です。
その罠にはまらないためにも、ヤフーの人事部門ではよく「いい1on1選手権をしているわけじゃないから」という表現をよく使っていました。

こがねん/小金蔵人さん

人間がどういうときにやる気になるかって、ポイントがたくさんある。
話を聴いてもらえてうれしい、仕事を褒められてうれしい、的確に厳しく指摘されてうれしい、わからないことを教えてもらえてうれしい等。
でも、コーチング、フィードバック、ティーチングを使い分けるのは、そう簡単ではなくて……

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

あっ、そもそも人によって必要なものは違うし、同じ人でも状況やタイミングで違うってことですか。

そうですそうです。
つまり、やる気を引き出すのに一番大事なことって「観察」なんですよね。
さっきの話の通り、未熟なときの僕は「あなたに困っています」って言われてうろたえたんです。
そういうときは「この人に嫌われてるのを何とかしなきゃ」とか考えるのではなくて、相手をしっかり観察するのが正しかったんだよ、と昔の僕に教えてあげたいです。
相手が自分のことを嫌っているってことがわかった、ってことは相手の観察が進んだってことだから「これはこれで、いい1on1だったじゃん」と言ってあげたい。

こがねん/小金蔵人さん

1on1でなにを話す? 話すことや話題に迷ったら「観察」に立ち戻る。

フジイユウジ

観察する、という観点を持って1on1やってないマネージャーはきっと多いですよね。
進捗確認しか話すことがない、みたいなのよく聞くし。

タスクの進捗しか話すことない、って1on1のお悩みとしてよく言われますよね。
それも「観察になっているか」に戻ってくればいいんですよ。

こがねん/小金蔵人さん

沈黙してたら「今この人は黙りたいんだな」とか、「この質問をしても簡単に答えなくないんだな」とわかる。
この人と自分は今そういう関係なんだってことがわかるだけでいい。
もっと違う角度から聞いてあげないといけないのかもしれない、と考えられるようになるので。

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

たしかにーーー
ともかく観察が進めばいいって考えるようにしていないといけないのか。

進捗確認してれば相手の観察が進むなら、それでもいい。
それだけだと観察が進まないなら、プライベートのことも聞いた方がその人の観察が進むよねって発想も出てくる。
大事なことは常に「何を話したらより観察が進むのか」なんです。

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

「部下をコーチングしなさい」とか「部下の話を聞くための場にしましょう」とかいう話になりがちじゃないですか。
そう考えてしまった時点で「いい1on1選手権」を始めちゃってるんですね…

コーチングがうまくできるかとか、部下の話を聞いてるかとかは、もうそんなに大事なことじゃなくて、観察が進むなら別に上司が喋ってもいいんですよ。
相手が話してくれてる方が観察が進むことは多いでしょうけど、上司がしゃべることがダメとかじゃないんで。

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

「1on1は、部下の話を聞く場にしろ」ってよく聞きますよね。
やる気を引き出すという目的に対して、やる気を出してもらうための課題を見つけたり、相手がどういう人なのかを知るための観察を徹底しようってことか……。
1on1の場で結果を出すんじゃなくて。

そうですそうです。
こちらの話に相手がどういう反応を示すか、どういう話をしたらうれしいのか、とか相手の観察をもっと進めようという純粋な思いがないと、相手に合わせた問いかけやコーチングができることはないですよ。

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

相手を観察できていないうちから「こういうコーチングをすればいいんだ」となるわけないですもんね。

あと、1on1って1回1回が勝負じゃなくて、半年間とか1年のなかで「このタイミングではこんな話をしよう」みたいな期間で考えることが大事だったりするんですよ。
だから、今日の1on1でやる気を出してもらえる話をするとかいう必要はなくて、今日はどんなコンディションなのか興味関心を持って、変化やタイミングを観察するのが良いと思います。

こがねん/小金蔵人さん

「私のことを知らない人に評価されたくない」が観察によって解決される。

ある程度の期間のなかで変化をみるためにも、1on1のログは継続的に見返せる形で残すといいと思います。
この人にこうなってほしいとか、その時々に考えたことや感じたことを書いておいて。
3ヶ月前の1on1で言ってたこととか観察したことを相手に話したら「ちゃんと見てくれてるんだ、覚えてくれているんだ」って伝わりますよね。
上司が、自分以上に自分のことをわかってくれている、って最高なんですよ。

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

ログ残すときに継続的に読む形にしておくっていいですね。
自分のことわかってくれてるって感じる相手からの評価は素直に聞けるってのも納得です。

そうそう。
自分のことわかってくれてると感じる相手からなら「ごめん、ちょっと今期イマイチだったわ」って言われたとしても納得感ありますよね。
イマイチだった理由を問い返したときに、自分を見てちゃんと見てるんだなあと感じる答えが返ってくるなら、信頼できると感じる。
これも観察して相手をよく見てるからできる。

こがねん/小金蔵人さん

逆に、自分のことを知らない上司には評価されたくない、って気持ちを持っている人も多いでしょうね。
実は表面では上司のことを嫌いみたいな態度をとっている人も、嫌いってよりも「私のことを知らないでしょ」って感覚なことが多いんじゃないかなと。

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

うわーーー
すべてが繋がりました。
メンバーとマネージャーの関係が悪くなるときって、好き嫌いよりも「私のこと知らんやつがわかるわけない」ってニンゲンらしい根源的な不満があることが多くて、観察はそれを解決できるんだ。

部下側・メンバーなら、1on1を「自分のための時間」として活用する。

フジイユウジ

チームコミュニケーションのツールであるわりには、メンバー向けの「1on1をこう使い倒すと良いよ」って情報があまりない気がするんですけど、どうするといいんですかね?
世の中にマネージャーはこうすべし、っていう情報がめちゃくちゃ沢山ある割に若手とか一般社員向けの情報って少ないので、こがねんさんからアドバイスもらえたらな、と。

いいですね、部下側から見た1on1の話をしたかったんですよ。
上司側には「部下のための時間だぞ」みたいな研修がある割に、部下側がどうすれば自分のためになるのか情報がないですもんね。

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

そうそうそう、そうなんです。
「まあ上司がやるっていうから1on1してる」みたいに感じやすいじゃないですか。それだと、上司と強制的に話さないといけない時間にしかならんですよね。
人によっては1on1の時間は苦痛って思ってたりするわけで……

部下から見た1on1って「部下が上司を使い倒していい時間」だと思うんですね。
上司って仕事を進める上で絶対に味方につけといた方がいい最大のビジネスパートナーなわけじゃないですか。
敵にしちゃいけないし、上司だって敵になんか絶対なりたくないわけです。

こがねん/小金蔵人さん

自分のためだけに上司を使っていい時間だと考えると最高なのに、そうなっていない。
もったいないですよ。

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

自分のためだけに上司を使っていい時間って考え方、めちゃめちゃいいですね!!
「今から私の話を聞いてください」って言ったら「おー、話せ話せ」って聞いてくれるわけですし、自分の好きなように上司を使い倒せる時間だと思うと、最高ですね!

1on1における上司って評価者になったらダメで、ただの壁じゃなきゃいけないんですよね。
だから、上司にも部下にも「1on1は上司が壁になって、部下が好きに壁打ちする場として使え」と言ってあげた方がいい。
とにかく今思ってることをワーッとしゃべったら人間って整理がつくんで、それやった方がいいよって時間ですね。
上司が何かしてくれるとか、上司が評価してるって思っていたら、そういう時間にはならないので、上司も部下もその理解はいるんですけど。

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

上司に「俺、こうだったら仕事しやすいっす」って雑に言っていいとか最高っすね(笑)
そうやって自分のやりやすいように上司を誘導したり、思ったことぶつけていい時間なんだってとらえると、途端に1on1が自分のための時間だなって思えるだろうなあ。
一方で、 1on1 のことを、まるでボクシングのごとく、リングに上がって上司とスパーリングさせられる時間みたいなイメージを持ってる人もいると思うんですよ。
上司と対峙しないといけない緊張感ある時間みたいな。

たしかに(笑)
ボクシングに例えるなら、上司は敵ではなくてセコンド役なんですけどね。部下の敵になりたい上司なんていないんで。
上司にも部下にも、評価の時間じゃないとか、壁打ちだよって強調してフラットな関係になれる時間だって意識付けが必要なんでしょうね。

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

上司はビジネスパートナーであり、敵ではなくてセコンド。
上司からしたらメンバーが弱音を吐いてくれたらめっちゃうれしいでしょうし、サポートできるーって張り切っちゃうだろうし。

部下側も、良い成果を出して良い評価を得るためにはやっぱり人と対話できないとダメだし、いい1on1選手権をするんじゃなく、上司ともしっかり向き合って対話しようということです。
ビジネスパートナーであり、セコンドである上司と対話できていなかったらやばいよね、って。

こがねん/小金蔵人さん

「今週の1on1はスキップ」が頻発するチームは危うい。

フジイユウジ

ところで、「今日話すことないんでスキップします」っていう頻度が高いチームって結構あると思うんですね。
「話すことないから今週ナシ」が多いのは対話を面倒くさがってるなって感じるんで、ぼくはこの1on1 スキップ問題が気になってるんですよ。

目的が情報共有とか合意形成だと考えてるから、「話すことないから今週ナシ」にしちゃうんですよね。
1on1ってそういう営みではないので、観察のためにはやり続けることがやっぱり大事だし、頻度高く定期的にやっていることにこそ価値がある。
良かろうが悪かろうがするのが1on1になってないといけなくて、どうすれば1on1が良くなるかじゃない。良くしなくていい、ただ1on1をやればいいんです、って話なんですよね。

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

おおお、なるほどー
これまで感覚的に「1on1をスキップすんな、コミュニケーション面倒がるな、いいからやってくれー」ってずっと思ってて(笑)
でも、それをどうしてやった方がいいのかキレイに説明できてなかったんですよね。
この話を聞いて、今日やるかやらないかじゃなく、ともかく継続的にやる理由を完全に説明できるようになりました。

上司が部下を観察する時間であり、部下も上司を観察する時間なんです。
関係性を良くするということにとらわれすぎず、お互いに相手の観察に徹することで、どんな感情で、どんな経験で、どんな価値観から来てる発言なのかを徹底的に考え続けることができるようになる。
そうすることで、はじめて相手がどういう人間なのかをその人以上に理解できる。それが観察なんですよ。

こがねん/小金蔵人さん

「観察」のあと、どうやって可視化された問題解決するのか?

フジイユウジ

この観点、マジ最高だなあ。
観察なんだから、いい1on1なんかしなくていいし、いますぐ関係性を良くするツールでもない。
そこまで理解したら、観察の先にある目的に近づくための「良い観察ってなんなの」とか「観察して、それをどうしていけば本当の目的を達成できるの」ってことが気になりますね。

まず、観察を徹底的にやって何を発見したらいいのかって話ですが、相手が持っている「願い」と「恐れ」という2つの情報を手に入れることです。
この人が得たいものは何か、逆に何を失いたくないと思っている人かがわかればマネージャーはその後のほとんどのマネジメント業務がうまくいく。

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

そうか。なるほど。
その相手がどういう生活をしたい人で、そのなかで仕事をどうしたいと思っているのか分かる。

相手の「願い」がわかれば、「この仕事をがんばったら、この先こんな仕事をやってもらうようになるよ。それができればあなたが望んでいる生活や仕事が得られるよ」って伝えられるようになる。
人が会社を辞めちゃうのって「この会社では自分の欲しいものが得られない」と感じたときが多いと思うんです。
活躍してもらいたいなら、ちゃんと「欲しいもの」を渡す必要があるし、そのためにも「欲しいもの」を知っておかなきゃいけない。

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

おお……ライフスタイルやキャリアを理解して、やってほしい仕事と擦り合わせていくやつだ。

で、観察によってもう1つ得られる相手の「恐れ」。
これを知っていれば、「自分はお金のために働いているので、お金だけもらえばいい」とか言いながら周囲と協力しない人がいたとしても、
「その働き方だと組織の中では上手くいかないし、上手くいかないから評価が下がって、あなたが恐れているお金が得られない状況になる。だから一緒に周囲と協力して、チームで成果を出して、しっかりお金ももらおうぜ。」
ってふうに言いやすくなる。

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

あー、相手のなりたい姿、なりたくない姿を知ることで「このままだと、あなたのなりたくない将来になっちゃうから変えようぜ」って話ができるってことか。

そうそう。
なりたい姿、なりたくない姿がわかりやすいかもしれませんね。
ここを正確に理解しておくと、こんなに強力な武器が得られる。

こがねん/小金蔵人さん

よく、「今のままで良い。3年後になりたい姿とかないって部下をどうしたらいいのか」って聞かれるんですが、
「今のままでいたいって言ってるわけですよね。だったら『今のままのスタンスで仕事してると、今のままでいられなくなるよ。』って伝えてください。」
と答えています。
よく観察して、相手の「恐れ」るものを知っていれば、これが言える。

こがねん/小金蔵人さん

フジイユウジ

うわー、この話でかなり整理ついたなあ。
マネジメントするための情報を得るためのツールとして1on1での観察があって、それがあってはじめてマネジメントができるようになる、観察が中途半端だとマネジメントできないってことですよね。
「願い」と「恐れ」がわかれば、相手を無理やり動かそうとしなくても、なりたい姿になれるように仕事をしてもらうようにマネージャーがサポートできる。
それによって、業務の成果も得られるようになる。

そうです。
目標管理も、ジョブアサインも、1on1から観察で得られている情報があれば全部うまくいくはずなんです。
よく「マネジメントはセンスではなくスキル」と言われます。誰もが後天的に学べる技術だということですね。1on1はその「いいマネジメント」をするためにすべてのマネージャーが最初に活用すべき大いなる武器だと思っています。
また「マネジメントはポータブル(持ち運び可能)なスキル」とも言われます。「いいマネジメント」ができれば、異なるメンバー・異なる部門・異なる会社・異なる業界でマネジメントすることになっても、力量を発揮できる、ということです。
1on1を通じて、そんなマネージャーが増えていくといいなと、心から思っています。

こがねん/小金蔵人さん

まとめ: 1on1で問題を改善するのではなく、ひたすら観察する場と捉える。

みんなやっているけれど、実はとても難しい1on1。
こがねんさんの「観察」の話で、難しさを感じる点にすべて答えをもらえたように感じました。

■ 1on1は「関係性のリトマス試験紙」。関係の良し悪しそのものが可視化される。
■ 1on1ごとにやる気を引き出すことや関係性を良くすることを目指さない。
■ 「継続的な観察の場」にし、やる気を引き出すのは1on1ではない場も含めて中期的に。
■ メンバー個々の「願い」と「恐れ」を知ることで、いいマネジメントを実現する。
■ メンバー側にも1on1を「自分のために上司を使い倒していい時間」と考えてもらう。
■ お互いに1on1を評価の場にしないことを握って、フラットな場にする。

「1on1はその本質を理解して取り組むことで、いいマネジメントに繋がっていくし、そうして得られたマネジメントスキルは環境が変わっても通用する屈強なものになっていく」という、こがねんさんの言葉には経験に裏打ちされた軸のようなものを感じたインタビューでした。

また機会があれば、1on1以外の組織コミュニケーションについてもお聞きしたいと思います。

こがねんさん X/Twitter

こがねんさん note

(企画・編集:フジイユウジ / 取材・文・撮影:奥川 隼彦)

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