職場にいる「こじらせた人」とどう仕事をしていけばよいのか
仕事に前向きではあるけれど、ちょっと扱いに困る「こじらせた」感じのする、あの人——— 今回のAgendは、楽天大学・学長の仲山さんにそんな「こじらせ社員」についてお聞きしてみました。
仲山さんのお話から見えてきたのは、相手を変えることではなく、自分が投げかける問いを変えていくというアプローチ。
同僚に対して、部下や上司に対して、「あの人どうしたらいいんだろう」と感じたことがある方は、どうぞ最後の「まとめ」までお読みください。
仲山 進也
仲山考材株式会社 代表取締役 / 楽天グループ株式会社 楽天大学 学長。
まだ社員20人しかいない創業期の楽天に入社。楽天市場出店者の学び合いの場「楽天大学」を設立。「仕事を遊ぼう」がモットー。
著書『今いるメンバーで「大金星」を挙げるチームの法則』『アオアシに学ぶ「考える葦」の育ち方』『組織にいながら、自由に働く。』『「組織のネコ」という働き方』他
【Agendインタビュアー】 フジイユウジ
Agend編集長。
スタートアップや様々な事業の経営やグロースに携わる中で、事業を成長させるためのチームコミュニケーションに興味を持つようになり、仕事のコミュニケーションメディア「Agend」を立ち上げた。
職場にいる、こじらせたあの人。
今日は、「こじらせた社員」の話をしたくて、お時間いただきました。
職場コミュニケーションをうまく処理できなくなって、人間関係や仕事の進め方を「こじらせ」てしまった状態というか。
具体的には、「やるべきことを知っているのに理由つけてやらない」だとか、逆に「言われたことはやるが、本当の問題を見ない」みたいなものがあると思います。
「問題を批評的に話すわりに理由つけて解決しようとしない」ってこじらせは、よく見かけますね。
「ウチのダメなところは……」って自分なりの気づきを言ってくるわりに、理由をつけて解決に動かない人っていますよね。
理由つけて動かないまま、3か月後も別の場所で「オレは前から指摘してるんだけど、これ問題だと思うんすよ」って言ってるような。
それは完全にこじらせネコですね (笑)
「組織のイヌ」と「組織のネコ」の分類で考えると、こじらせネコは「言われたことを、正当な理由なくやらない不良社員」が典型。
こじらせイヌは「言われたことをただやるだけの思考停止状態」が典型です。
仲山さんの書いた『
ネコトレ』本に出てくる、この図が面白いですね。
「組織のイヌ」と「組織のネコ」
仲山さんが様々な著書や資料で使っている、組織におけるビジネスパーソンの働き方や思考のタイプを表す言葉。
組織のイヌは、従順で協調性が高く、会社を安定して運営するために欠かせない存在。一方で、「言われたことしかやれない」ことによって、モヤモヤを抱える状態に陥りやすい。
組織のネコは、会社に属していながらも自分の軸を持っている、自由な発想で動けるタイプ。ただし、組織の枠にはまらないことで、ただの自分勝手になってしまうこともある。
仲山さんの著書『組織で自分らしく成果を上げる25のトレーニング ネコトレ』では、「こじらせイヌ」「こじらせネコ」は、このイヌ・ネコがバランスを崩した姿として表現されている。
仲山さんは他の著書やさまざまな記事でも、イヌ社員・ネコ社員について書かれていますね。
ここで大事なのが、イヌ社員とネコ社員はどっちが良くてどっちが悪いってことではなくて。
良いのは「すこやかなイヌ」と「すこやかなネコ」で、ダメなのは「こじらせたイヌ」と「こじらせたネコ」なんです。
「真面目で、しっかりやるんだけど新しい発想が出ない」とか「あいつはアイデアは良いけど、人を巻き込めない」みたいに悪いところばっかり目がいきがちですけど、それぞれの特性を理解して、それを活かしていけると良いよねという話ですね。
「本人が変わるのを待ちましょう」って、 まわりはずっと我慢するんですか?
こじらせネコって、みんなから困ったやつと思われるから発見しやすいですけど、イヌの「こじらせ」ってわかりにくい気がしません?
本人は「会社のために頑張っている」と信じていて、周りからは「アイツは一所懸命に取り組んでるけど、アイデアとか戦略とかないんだよな」って評価されている。
だから、困ったやつとまでは思われにくいというか。
そうなんです。
ただ、そういう思考停止した「こじらせイヌ」が、賞味期限の切れた仕事を真面目に頑張っちゃうことが、実は事業をこじらせている要因だったりしますよね。
じゃあ、その「こじらせ」状態のメンバーが目の前にいたとき、マネージャーや一緒に働く同僚たちはどうすればいいんでしょうね?
これが今日の本題なんですけど。
まず大前提として、こじらせを「他人が直してあげる」のは、むずかしいと思います。
マネージャーが「あいつをなんとかして変えなきゃ」と思って、面談を増やしたりフィードバックを工夫したりするんですけど、それで思い通りにはなりません。
馬を水辺まで連れていくことはできても、飲むかどうかは馬の問題、というやつですね。 アドラー心理学でいう「課題の分離」の話です。
「課題の分離」
「変わるかどうか」は本人の課題であって、マネージャーの課題ではないという整理をするアドラー心理学でよく知られる考え方。 仲山さんは「相手を変えること」ではなく、自分の側でできる関わり方を考えるという姿勢をもっている。
その話は分かるんですけど、それを「本人の問題である」とか「他人を変えることはできない」って言って、放置するしかないとなると、かなりキツくないですか?
チームは消耗していくし、業務のスピードも落ちてる。
まわりはずっと我慢するんですか、ってなりません?
変わらないから、放置するって話ではないんですよ。
死んだ魚みたいな目をしてた人が変わる瞬間って、本当にある。
それは、ぼくのこれまでの経験からも理解できます。
「人は変わらない」って斜に見る人もいるけど、ちゃんと変わることはありますよね。
ですよね。
周りから見たら「アイツ、昔はこじらせてましたよね」って人が、みんなから信頼できる仕事のできる「すこやかネコ」や「すこやかイヌ」になる。
でも、それは誰かに説得されて変わったんじゃなくて、本人が変わるタイミングが来たから変わるんですよ。
うーむ、、、
周りは、待つしかない……ってことですか?
待つことも大事なんですけど、ただ待つんじゃなくて。
焚き火の薪をイメージしてもらうと良いと思うんですけど。
焚き火するときに、湿った薪って投入しないですよね。
焚き火が消えちゃうから。
だから投入しないわけですけど、かといって放っておいても使えないので、乾かしますよね?
まずは乾いた薪で火を起こして、その近くに湿った薪を置く。
人間も、焚き火と同じように考えたらよいのでは、と思ってるんです。
あー、面白い考え方。
その人が「乾く」ような環境をつくるって良いですね。
ここで言う、乾かすというのは「熱量を伝えること」なので、燃えているメンバーが見えないところで活動していると、熱が伝わっていきません。
なので、活動の熱を発信していくコミュニケーション設計が大事だなと。
そうすると、熱を受け取っているうちに乾いた人が、「自分も入れてもらっていいですか」と近寄ってきたりする。
「まず自分たちが、すこやかな仕事をする」のを徹底しろって話だ。
こじらせたメンバーが「変わる」ことを願ってるだけの状態って、それこそ職場やチームがこじらせてる。
まず、それをどうにかすることからだ。
湿った薪に火つけることばかり気にしてると、乾いた薪で火を起こすことをしないまま時間だけが経ってしまう。
まず乾いた薪で良い状態をつくって、その上で相手が乾くタイミングを待つことも大事で。
こじらせてるメンバーって、他責なことが多いから、周りが「すこやか」でないと、余計にこじらせて他責を募らせていくんですよね。
そうならないように周りが「すこやか」でいるって大事ですよね。
その上で、先ほどの「馬を水場に連れていっても水を飲まない」って話の通り、相手が乾くタイミングは相手次第と考えるのも大事なんでしょうね。
そう。
周りが「こじらせ」をどうにかしようとすればするほど、やる気をなくしちゃう。
これは「教えすぎ問題」です。
それに気づいたマネージャーがコーチングの本なんかを読んで、付け焼き刃で「君はどう思うんだ、答えは君の中にある」とか言うんですけど、急にそれ言われても相手はポカンとしてしまう。
また、「仕事を任せたら、口出ししてはいけない」と思い込んで、見守ろうとしてみるんですけど、うまくいかずにイライラしてしまう。
そういう「教えすぎ問題」と「教えなさすぎ問題」がいろんなところで起こっています。
ここでも「育てようとする」のではなく「育ちやすい環境をつくる」のが大事だなと。答えを渡すんじゃなくて、本人が試行錯誤するなかで、自分で気づくのを助ける必要があるんです。
周りにできるのは「お題」を適切に渡すこと。
本人が試行錯誤する中で気づく必要があるというのは、もっともだと思います。
でも、やっぱり「こじらせてる人が気づくまで待つ」って耐えられない人が多い気がしますね…
こじらせてる他責モードの人に具体的な指示をすると、うまくいかなかったら「指示が悪かったせい」となるので、いつまでも乾かない可能性がありますね。
そこで「よいお題をつくって渡す」のが良いと思っています。
「お題設計アプローチ」と呼んでいるやり方なんですけど。
例えば、サッカーの練習で「リフティング30回できるようになろう」とかって目標を立てると、だいたい「あとちょっと」というところで緊張したり焦ったりしてボールを落とす、みたいなことになりがちですよね。
ミスしないように必死になって、縮こまっちゃうんですよね。
そこで、「何回落としてもいいから300回やる」というお題に置き換えてみるとするじゃないですか。
落としてもいいという前提なので、途中でミスしても全然気にならない。
おー、なるほど。
同じ「リフティング30回」という目標をクリアするにしても、制約条件を「落としたらやり直し」とするか「落としてもよいから300回やること」とするかで、引き出される行動が変わってくるんだ。
いろんな蹴り方も試せるので、そうやって没頭してると、気がついたら30回以上できるようになっちゃうんです。
周りが「すこやか」な仕事を見せて、本人の乾くタイミングを待ちながら、お題を渡していくって姿勢が必要なんですねえ。
みんな「相手にすぐ変わって欲しい」って考えがちだから、難しいだろうなあ。
乾くのを「待てない」のは、「お題がうまく設計できていないから」なんですよ。
「行動しやすい制約条件」のあるお題をきちんと設計できていると思えていれば、「あとは待つだけだな」と思えるはずなので。
「自分でつかんだ答えなら、一生忘れない。」
相手を変えようとするんじゃなくて、変えるのはお題の出し方だという考え方はとても良いですね。
例えば、「指摘はするけど、自分ではやらない系のこじらせ」には、どんなお題があるんですかね?
お題を出す側が「この仕事をやるときは、このポイントは必ず押さえること」と、制約条件として明示するのが大事です。
指摘はするけど自分ではやらないタイプのこじらせは、「そこは自分がやることではない」と思っているうちはやらない。
なので、「あなたの業務範囲です」ということを明示できれば、ふるまいは変わる可能性があるかなと。
ああ、なるほど。
「評論する側」に立っていられないお題にするんだ。
じゃあ、逆に自分で考えるべきことを上司に「どうしたらいいですか」って答えを聞きに来ちゃうイヌ社員には、どんなお題がありますかね。
例えばですけど、「お客さんが○○で困っている。この原因が上司にもわからないから調べてきて。ただし、10人以上のお客さんにインタビューしてリアルな状況を把握すること」みたいなお題にするのが面白いかもしれません。
このポイントは、「そのくらいのお客さんから話を聞くと、だんだん自分で考えるための材料がたまって、自分で考えられるようになりやすい」という人数を制約条件にすることなんですけど。
これって、お題を立てる側にかなり練度が必要そうですよね?
そうですね。
お題を設計する人は「制約条件のデザイナー」なんです。
自由度が高ければよいかというと、そうでもない。特に、お題をやる側の習熟度が低い場合は制約がある方が動きやすかったりします。
自由度が高すぎると何していいか分からなくなって、「それって何したらいいんですか」ってなりますもんね。
「迷子にならず、試行錯誤できるお題」に変えないといけない。
サッカー漫画の『アオアシ』にあるセリフで「自分でつかんだ答えなら、一生忘れない」っていう名言があるんですけど、これが「お題設計アプローチ」の目指すところで。
経験から自分でつかんだ答えは、一生忘れない!!!
「ちょっと面倒な人だな」って感じてしまう同僚や部下に対しても、自分はその人が自分で答えをつかめるような問いかけをできてるかな……って考えてみることから始めてみるのが良いのかもしれませんね。
まとめ:「あの人」を変えるのではなく、変えるのは「自分の問いかけ方」だった。
「こじらせたメンバーをどうしたらいいのか」———そう聞いたつもりが、気づけば自分の側の見え方のほうが変わっていくインタビューでした。
■ 自分がイヌ社員タイプだとネコ的な仕事が気になる。
また、自分がネコタイプだとイヌ的な仕事が気になってしまう。どちらが良い悪いではなく、それぞれの「らしさ」が出ているだけの状態と捉える。
■ 「変えにいく」のではなく、焚き火を起こして保つ。
周りが「すこやか」でいることが、本人が良い方向に変わるためにも必要。
■ 周りがやれるのは「お題の設計」
失敗しながら試行錯誤できるお題を渡す。ただ失敗できる、ただ試行錯誤できるのではなく、本人の学びがあるお題を設計することが大事。
■ 自分でつかんだ答えなら、一生忘れない。
「変えようとする」よりも「お題を渡して待つ」方が、結局は早い。
みなさんの職場にも、思い当たる「あの人」がいるのではないでしょうか。 ちょっとだけ面倒に感じていた「あの人」とのコミュニケーションを、少し変えてみようかなと思ってもらえたら幸いです。
アオアシに学ぶ「答えを教えない」教え方: 自律的に学ぶ個と組織を育む「お題設計アプローチ」とは
「組織のネコ」という働き方 「組織のイヌ」に違和感がある人のための、成果を出し続けるヒント
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(企画・編集:フジイユウジ / 取材・文・撮影:奥川 隼彦)取材:2026年2月